奥川くん、その夢を神宮で叶えないか? pt.4

たしかに昨日の感じで終われば爽やかなんでしょうけど、せっかくの黄金ドラ1なので、飽きるまで語っていきましょうよ。



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優勝候補同士、名門校同士の一戦ということで、序盤からものすごい緊張感があったのを覚えてます。大会ナンバーワン投手の奥川恭伸に対して、柔剛兼ね備えた智弁和歌山の重厚な打線が牙を剥くという、甲子園の歴史に残る名勝負となったこの一戦。
これをサンプルに奥川くんの素晴らしさを再確認していきましょう。
延長14回を165球完投勝利。20分の動画の中に惚れ惚れするボールがもうたくさんあるんですけど、その中からいくつか抜き出しましょう。
3:50の154km/hストレート、7:27の153km/hストレート、9:32のストレート、11:26の150km/hストレート。こういう見逃しの三振が奪える直球というのは、球威だけじゃなくてコントロールも必要となる。美しさすら漂うこのフォーシームの質の高さは、ヤクルトの先輩である川島亮を思い出させます。シャープに突き刺さるストレートはプロ相手にも通用するはず。リリースしたボールがミットに収まる前から確信してベンチへ走り出す奥川くんの王者っぷりが最高にカッコイイです。
ストレートの走りとコントロールの良さは延長に入ってからも続きました。特に19:08の152km/hストレートと、19:26の152km/hストレート。この2球に関しては外角低めではなく、意識して外角高めに放っている。タイブレークで打ち気にはやる相手に対し、空振り三振を狙いにいくストレート。しかも延長戦もだいぶ進んだ中、極限の状況下でのトップギア152キロ。これもまた心技体の充実した見事な投球になってます。
さらに後者の投球場面をもう一度見てほしい。この場面、二塁ランナーを3度見ている。それまではランナーを1度見てから投げていたのに、この場面だけ3回、しかも1回見たあとすぐに2回目を見て、その2回目の睨みを少し長めに取った後またすぐに3回目を見て、投げている。お分かりいただけただろうか。投げる間合いを変えているのだ。ツーストライクナッシングに追い込んだ相手が必死に来るところをタイミング取りにくくなるように、間合いを変えている。その上であの完璧なストレート。素晴らしすぎる。何もかもが投球センスを感じさせる。奥川くんの喜び方もダイナミックでカッコイイが、この場面は山瀬慎之助くんのガッツポーズもド派手でカッコイイ。
ストレートの質とコントロール、投球術、フィールディング、クイック、ギアチェンジ。このあたりは本当に素晴らしい。過去の歴代投手たちと比べても遜色ないどころか、トップクラスだと思います。
その一方で変化球はどうか。得意球はスライダーで、この試合でもカウント球、勝負球として重宝されていたが、このボールがプロに通用するかどうかはわかりません。こればかりはやってみないとわからない。実戦で答えが出るまでわかりません。
一応個人的な見解を書いておくと、素人目には松坂大輔のスライダー、田中将大のスライダーあたりと比べたら、ちょっとランクが落ちるかなという気がしてます。松井裕樹の鬼スライダーには当然及ばないのは仕方ないにしても、下手したら斎藤佑樹のスライダーよりも落ちる可能性すらある。まぁ意外とプロも打ちにくいスライダーでしたっていう可能性も当然ありますけど、現状どうかなぁと。
ただ、もしそのスライダーが勝負球として物足りなさが出てくる場合、別を用意する必要があるが、僕はわりと楽観的に見てます。
現状あと2つ変化球があって、スプリットとチェンジアップだね。これらに期待してる。
スプリットは4:28の142km/h、11:38の142km/h、12:13の144km/h、17:40の135km/hあたりかな。センバツの時はもっと投げてた気がしたけど、この試合ではほんの少し。しかも左打者のみにしか投げてない。これは何故だろう。自信がない球種は投げない的なアレなのか、山瀬くんのリードによるものなのか、それともプロ行くまで封印しようっていう桑田プレーなのか。そこらへんはわかりませんが、磨けば実戦で威力を発揮しそう。やっぱり苦しい場面では縦の変化球で三振取りたいからね、スプリットの存在がフォーシームの価値をさらに高めてくれるはず。器用な奥川くんのことだから、その気になればもっとスプリットのクオリティを上げられるはず。
そしてチェンジアップですが12:04の127km/hと、13:19の132km/hの2球ぐらいかな。少なかったけど、どちらのボールもブレーキが利いていて効果的な感じがした。スプリットよりも緩急が付く分もっと威力を発揮しそうな気がするので、これもまたモノにしてほしいと強く願います。
変化球はなんとでもなる。
ここで一応他に少し心配な点も書いておくか。

  • スタミナ

スタミナと言っても1試合分のスタミナっていう話ではなく、長いペナントレースを駆け抜けるという意味でのスタミナです。
馬力ですね。身体に蓄えられたエネルギーという点では田中マーとか藤浪晋太郎とか高橋光成あたりと比べたら少ないかな。タフネスっていうイメージで言えば今村猛とか島袋洋奨も強かったイメージがある。そういう感じは奥川くんにはないかな。
でも大輔だって別に飄々とやってましたから、奥川くんだって別にサラッと一年を余裕で過ごしてくれるかもしれない。まぁなんとでもなる。大丈夫。

  • 勝負強さ

結局、星稜高校は準優勝に終わってしまったわけなんですが。
まぁ全然気にする必要はない。甲子園優勝投手で名球会入りできてる投手って何人いるか知ってます?たったの一人ですよ。平松政次だけ。(ちなみに王貞治柴田勲は甲子園優勝投手ですが、野手として名球会入り。とんでもない化け物たちです。柴田は夏春連覇で、王と平松は選抜のみ。柴田はスイッチヒッター2000本安打ということで、これも松井稼頭央と合わせて二人しかいないっていう凄まじさです)
200勝してる甲子園優勝投手は平松と野口二郎だけ。しかも二人はプロでの優勝はない。
だから全然いいんだよ。なんとでもなる。大丈夫。

めっちゃ悪い言い方をすると、奥川くんの顔って特徴がないんだよね。モブ顔。
まぁ歴代でも顔のいい甲子園優勝投手なんて吉永健太朗しかいませんでしたけどね。まぁあと堂林翔太か。あとはなんや、優勝してないけど荒木大輔とか太田幸司とか。吉永は元気に過ごしてるんだろうか。
でも言わせてもらいますけど、大事なのは愛嬌ですよ。愛嬌。
愛嬌が一番大事。これが人間のすべて。何回も書きますよ。愛嬌が大事。
男は度胸、女は愛嬌、坊主はお経っていうフレーズがありますが。
いいですか、男も女も愛嬌がすべて。愛嬌がある人は度胸もある。自然と身につく。逆はない。度胸があっても愛嬌がない人なんてたくさんいる。
昨日から奥川くんをさらに気合いを入れて見させてもらってて、それで気づいたのが、笑顔が綺麗だなぁって。歯並びも綺麗だし、笑った時の表情が柔らかいんだよね。リラックスしてて、そのくだけた感じが愛嬌につながると思う。
喋りもスマート。スムースだし、発声も安定してて、器の大きさを感じる。
美しいヒーローインタビューと言えば木佐貫洋という偉大な男がいましたが、今のプロ野球界で言うと今宮健太。彼の喋りは滑らかで心底丁寧。背筋がゾワっとするぐらい綺麗な喋りをする、素敵な人です。あと安田尚憲。思慮深さと優しさと大らかさがあって、紳士的なホームランバッターとかカッコ良すぎますよね。早く一軍に上がってきてほしいです。
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奥川くんもこのラインナップに並べられるような、最高のインタビュー姿を見せてくれるはず。
まぁあの松井秀喜の後輩ですから。間違いないでしょ。
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最後にひとつ。
僕が強烈に興奮させられた奥川エピソード。
甲子園の後、U18野球W杯という大会がありました。
監督とかコーチがヘボすぎて早期敗退に終わりましたが、そんな中、奥川くんも1試合だけ投げてます。カナダ戦。
確かルール上投球数が105球を超えると次の登板まで中何日か空けないといけないみたいなルールがあったのよ。
相手がカナダなんで余裕いっぱいの奥川くんはガンガン三振をとりながら7回のマウンドにも上がりました。
その時点でもう90球ぐらい投げてたのよ。で、それで続投とか言うもんだからさ、おいおい大丈夫かよと、105球超えちゃうじゃねぇかと、監督アホかと、まぁ監督はアホだったんですが、めっちゃ心配しながら見てました。
しかし奥川くんは天才なんです。
2アウトを取ったところでちょうど100球に達していた。あと5球以内に打ち取らなくてはいけない。大丈夫か。
別になんてことないよと言わんばかりの三球三振を奪ってしまう奥川&山瀬バッテリー。結局103球でフィニッシュ。ちなみに18K。
僕は叫んだよ。すげーよ天才だよ凄すぎるってマジでとんでもねぇなぁオイって。
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その時は表面上は無邪気に観戦してたけど。
ただ心の片隅には、こんなすごいピッチャー、どうせ他所のチームがクジ引きで勝つんだろうなぁ、ヤクルトとは縁がないんだろうなぁって、いじけてる情けない感情もあったんだ。どうせ叶わない片想いみたいな。
だから、決まった時は本当に、本当に嬉しかったんだ。
ホントよかった。