『jeen-yuhs: A Kanye Trilogy pt.2』雑感

パート1の最後、地道な努力の甲斐あってついにメジャーディールをゲットしたカニエ・ウェスト
しかしディールを結んだからと言って、何かが保証されるわけではない。
まだまだ闘いは続いていく...
ということで書いていきます。
ネタバレも厭わず。




0:00:17
"Special Lady" by The Winans
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ワイナンズはちょっと知らんのよね。申し訳ない。
Mario Winansは厳密にはこのワイナンズ家の血は引いてないんですが、お母さんがワイナンズの一員と結婚した際の連れ子ということでワイナンズ性を授かり、それをステージネームにしたという。


0:05:42
Peedi Crakk
そりゃ華もあるし声もいい。ラップも上手い。しかしこんなヤツばっかじゃんラッパーなんて。
結構いい扱いを受けて準備万端だったはずなのにデビューできずのPeedi。まぁそういう業界なんよ。
Young Gunzがアルバム2枚出せてPeediがアルバムデビューできなかったのは、タイミングというか運不運の問題でしかないと思う。
ラッパーとして必要な要素は全部持ってる。あと2、3年早く生まれてれば。


0:06:17
Big Face Gary
めっちゃイキってBest Rapper-Producerと連呼してるけど、それに反発するカニエ。
通りがかったBeanie Sigelに同意を求めてリアクションに困ってるシーゲルに笑いつつ。
ここはパート2も苦しい闘いが続くことを示唆する象徴的なシーン。デビューも決まらず、世間の偏見も強くてね。
このおじさんも今どう思ってんだろうな。10数年後にめっちゃ晒されて。
しかもPeedi推しだし。
そりゃこんな凡庸なおじさんにわかるわけないよな未来なんて。ビジョンも美意識も芸術への理解もなさそうだし。
ここに至るまでキャピタルレコーズとかロウカスのA&Rも登場してきましたが、群を抜いて知能の低そうな振る舞いが逆にいい味になってるのか。
A&Rなんて誰でもできるし、誰でもなれる。コネさえあれば。
就職してからの業績は知らん。それっぽいことだけやっていけば何とかなるんでしょ多分。
くだらんね。くだらんけど、わりと世の中そんなもんではある。


0:07:23
Jay-Z
Jay-Z新作にプロデューサーとして参加したカニエは、自らのソロデビューの道程ということもあってアピールに余念がなく、そのレコーディング中にラップを披露。そこそこに納得してもらって、その楽曲のヴァースをいただくことに。喜びに包まれながらブースに入るものの、そこでのジェイのガチなディレクションに緊張が走る。
頂点に立つラッパーからのガチなアドバイスをしっかり反芻しながら全力を尽くすそのシーンは、このドキュメンタリーの中でもレアなシーン。「徐々に乗っていくんじゃなくて、ド頭から感情をしっかり込めろ」っていう短いディレクションに、より集中力を高めて奮闘。偉大すぎる兄貴も、一生懸命な弟も、どっちも素敵なシーンでした。
そういえばBlueprint 2は駄作として知られていて、カニエのトラックも捻りのないアベレージなトラックしかなかったよなと今振り返ってみると思うけど、この時期は露骨に温存してたのかもしれん。自分用にいいのはキープしておいて、周りには平均以下のを提供してたとか。


0:16:30
謎の日本人っぽい歯科医師
カニエの着てるReese'sのTシャツに食べてぇな感も高まりつつ。
この英語の発音の怪しさから言って、この歯科医は日本人っぽいけどどうなんだろう。


0:24:24
Jamie Foxx
ただのコメディアン風情がこんな一丁前なレコーディングスタジオ持ちなのはビックリしつつ。
曲の方向性をわかりやすく楽しく伝えられるカニエのその才能。やっぱり真の天才は説明が上手い。間違いなく。わかりやすい言葉でたくさんのことを少しの分量で伝えられる。
すぐさま深く理解したジェイミーがサビを歌い込んで曲が完成に向かっていく、なかなかのハイライトシーン。
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このSlow Jamzという曲はTwistaというシカゴの先輩ラッパーのシングルとしてリリースされて全米チャートを制覇。Twistaだけじゃなくて、プロデュース&最初のヴァースをラップしたカニエにとっても、ただのコメディアン俳優でしかなかったジェイミーにとっても大きなきっかけになった。いやむしろゲストクレジット二人のスタート地点として語られがち。
後にカニエのアルバムに収録されたバージョンはジェイミーの語りから始まり、ジェイミーのブリッジもある豪華版なんだけど、むしろこのレコーディングを見る限り、進めていく中でアイディアが膨らんで行ってたくさん収録した結果の本来の完成形がこのカニエ版の方で、Twista版のはシングル用にシンプルに削ぎ落としたバージョンなんだなとわかる。そりゃラジオでかけてもらうシングルの冒頭で曲もなしにジェイミーの「カニエ、俺フォックスだけど、あのさぁ俺たちってあんまり女の子の気持ちになって考えたことないじゃんか。」みたいなベシャリを入れてラジオでかけてもらえるわけないよなっていう。
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0:28:23
Ludacris
リュダには全米ナンバーワンヒット"Stand Up"を提供してるし良好な関係よ。
しかし最近アルバム出してないよねLuda。何してんのと思ったら俳優業ね、まぁそっちの方が無難か。
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0:30:58
Pharrell
ファレルをスタジオ内でわざわざ探してお邪魔して、フリースタイルのラップを見せてそこそこに納得してもらった後、本命の新曲"Through The Wire"を聴かせるカニエ。多分さっきのラップの段階ではおそらくそんなにその気じゃなかったファレルも、Through The Wireを聴き始めた瞬間に表情が一変、腕組みをしながら無表情で聴いていたのが居ても立ってもいられず笑顔で身体を動かし出し、終いにはそのグルーヴとエネルギーに感服したのか笑顔も消え失せて、曲終わりにはスタジオから出ていってしまう。一体どういう気持ちの動きがあったのか。カニエの撮影班が慌てて後をついて行くと、穏やかな表情のファレルが戻ってきた。どんな思いで、どんな表情でスタジオを出て行ったのか、僕らは知る由もない。
帰ってきたファレルは歌詞の意味を確認して理解し、賞賛・絶賛の言葉を並べると、真剣な眼差しで将来のアドバイスを送った。
「お前は間違いなく成功する。成功してもそのままの視野、そのままの価値観をキープしろよ」
「才能があるヤツは、その後自惚れで終わってしまうヤツも多い、お前がそうだとは思わないけど。周りから褒められても、変わらず自分を疑え」
カッケェよなぁ。こういうガチシーンは本当に震える。カッコ良すぎる。
アルバムリリース日が決まらずにもがいてたあのタイミングで一番欲しかった言葉、しかもありがたすぎるアドバイスまで貰えて、カニエにとっても大きな瞬間だったと思う。
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ちなみにファレルの方が4つ年上です。ええーーー?!ってなるよな。わけわからん。
でもまぁ先にプロデュース業で頭角を現したのはファレルだよねNoreagaのSuperThugとかで。だからそう考えると違和感ない。


0:38:02
Jay-Zに託せないアイディアが俺の中に50%ある
これだよね。これこそが真実。


0:39:55
Deray
この映像も見たことあるぞ。一番のサビぐらいで叫んでる兄ちゃんや。
撮影者&このドキュメンタリーの監督Coodieの地元シカゴのコメディ仲間らしい。
あの超印象的な校長先生スキットもこのDerayの声だったのかと知る。
こうやって全ての力を全身全霊注ぎ込んだわけで、そりゃあのクラシックが生まれるわけよ。


0:41:30
Coodie
そのクーディーさんのスタンダップコメディ。まあまあ面白いトークで良かった。


0:42:55
J. Ivy
これまた地元の詩人。Malik Yusefもそうだけど、シカゴは寒いから家に閉じこもりがちで、それだから妄想も広がって、詩人が産まれるんだろう。Kanyeみたいな笑えるキチガイも、R. Kellyみたいな笑えないキチガイも産んじゃうんだろう。
"Never Let You Down"の最後の方のポエトリーリーディングは最高でした。強くて勇ましい。楽曲に奥行きが出たよね。
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0:44:27
John Legend
ちらっと映ったこの男は間違いなくジョン伝説さんやないか。
キャリア序盤は彼の音楽知識がカニエのソウルフルネスを大きく支えていたんだろうなと思います。単純にそのボーカルで援護するだけでなく、楽譜とかコードとかの音楽知識でカニエの手が届かないあたりを上手くカバーしてたんだろうと勝手に想像する。大きなサンクスですよマジで。


0:50:57
Chaka Khan
Through The WireのMVラストはチャカ・カーンのポスターをバックにして終わる。この感謝の仕方はナイススマート。
でもホント彼女が冗談の通じる人で良かった。

素晴らしい女性だし、サンプリングを許可してくれたことにも感謝してる。チャカは“Through The Wire”を気に入ってくれたよ。ヴェテランの人はけっこうサンプリングに抵抗があったりするもんだけど、オレのトラックにはソウルがあるって認めてくれたんだ」。――カニエ・ウェスト(談)
by 子供の頃から聴いてたよ――Kanye West - TOWER RECORDS ONLINE



0:53:28
Def Poetry Jam
すごい番組よね。ポエムを披露する番組をMTVでやるっていう。本場のMTVは本気度が違う。
まぁでも日本で言うところのM-1グランプリがこれに該当するのかもしれない。M-1だけじゃなくて、いわゆるネタ番組全般がこれに該当する感じか。
日本におけるお笑い芸人=アメリカのラッパー。これは間違いない。
この番組におけるカニエのパフォーマンスも絶好調。見応えあります。


0:56:57
パノラマ撮影&印象採取
当然ピアス外して撮影。術前のパノラマ画像も映ってますが、断層位置はちょっと前過ぎませんかね。もうちょっとだけ後ろにすれば下顎前歯もよく写るのに。パノラマ撮影シーンもあって、無駄に全身防護エプロンを着けてます。時代ですね、って思ったけど、未だにアメリカだとこんな感じなのかもしれん。それともカニエがまた偉そうに防護しろと無駄に言ってきたのかも。


1:02:14
MVリリースパーティー
業を煮やしたカニエが自費でThrouth The WireのMVをCoodieたちの協力もあって完成させると、おそらく自費でリリースパーティーまで開催。デイム・ダッシュも呼んで、なんとかアルバムのrelease dateを勝ち獲りたいところ。
披露する前のカニエのスピーチも素敵。この頃はすごくストレートでがむしゃらな青年。


1:04:50
"Through The Wire"
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僕のこのブログの名前もここから貰ってますから、格別の思いがあります。
単純にトラックが好きなんだよね、チャカカーンのサンプリングがキャッチーで面白いなと、そこにハマって。
その後歌詞を知ったらこれまた凝ってて面白くて。
しかもよくよく知ったら壮絶な状況だったらしくて。
勇気を出して買ってみたアルバムが、これまた歴史的な傑作、僕の人生でもナンバーワンにハマった名盤で。
ありがたい。本当にカニエには感謝しかない。こんなにも楽しませてくれてね。


1:22:26
Puff Daddy
Jamie Foxxとの"Gold Digger"レコーディング風景のあと、パフ・ダディやThe Gameとレコーディングしてるシーンがあって、そうか"Everything I Love"は2005年レコーディングだったんだなと知る。セカンドアルバム『Late Registration』の後にリリースされたパフの『Press Play』に収録されていて、カニエのプロデュースということだけど作風は古いなぁと、Late Registrationの後にこんな感じのトラックをまだやるんだなと思った記憶があるけど、やっぱりちょっと古いプロダクションだったんだなと納得。どうでもいい話だ。
Mase仕事とかでカニエとPuffは会ってないんだろうか。あとMadd Rapper仕事とかも。どうなんだろう。
Everything I LoveはGameのリリックじゃなかったと思う。あいつはWe Gon Make Itのゴーストライターだったはず。
カニエとGameで言えば"Crack Music"でサビオンリーという不遇もあったり"Dreams"という微妙曲を提供されたりとこの時期は辛かっただろうけど、その我慢を経て実力を認めてもらってから結構ハイレベルな提供曲"Wouldn't Get Far"に繋がったりと、えらいね頑張って。


1:26:12
2005 Grammys スピーチ
名スピーチ。
"Everybody wanted to know what I would do if I didn't win. I guess we'll never know."
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さてあと一回分。