そうだよなぁと


今日のFIFAワールドカップタイム デイリーレビューのスペシャルゲストは遠藤保仁でした。
劣勢の時間帯を跳ね返すために中盤の選手たちが取り得た手段をいくつか提示してみせて、流石すぎるその圧倒的戦術眼を披露するなど見どころたっぷりの時間となりました。個人的にはリーダーシップとか大胆さが足りなくて好きじゃない選手ではあるんですが、やはりその知識の深さはえげつなく、その一部が垣間見えて正直興奮しました。できればPKの技術論なんかも聞きたかったけど、まぁええか。
番組の一番のハイライトは冒頭に貼ったツイートの動画のシーン。僕も含めた視聴者だけでなくその場に居合わせた小澤一郎さんもヤットの凄まじさに感銘を受けたのは間違いなく、思わず小澤さんがヤット本人に「第二の遠藤が欲しいんですよ我々は」と質問する形になった。
「この日本代表はヨーロッパでこれだけの経験をしている(のに実戦の中での対応力がない)。相手の出方とか配置を見て、自分たちのベースを崩しながら保持していくみたいなところは、遠藤さんは国内でずっとやっていてもそういうことをこのレベルで出来る選手だったんですけど、そういう選手を増やしていくためにはどうしたらいいと思いますか?」
素晴らしすぎる質問ですよ。小澤さんはいつもいつも本当に素晴らしい。前回の玉田圭司金崎夢生のゲスト回の時も現セルビア代表監督のストイコビッチについて話題を振ってみたりと、とにかく気が利きすぎる。賢くて品があって、めちゃくちゃ優しい人なんだろうなぁ。
この素晴らしい質問にヤットがどう答えるか注目してたんですが、少し笑ってお茶を濁すように「時代が違う。時代が求める人材が違うんじゃないか。だから難しい」という回答をしていました。
んー... いやまぁわかるよ。言ってることは間違っちゃいない。でもそうじゃなくて、何かしらのヒントやきっかけを残して欲しかったんよ。


ヤットのキャリアを振り返った時、忘れられがちだけど一番重要なのが、ルーキーイヤーを横浜フリューゲルスで過ごしているところなんだよね。今は亡きあの伝説のオリ10、フリューゲルス。当時の監督はカルレス・レシャック。ヨハン・クライフの薫陶を受けたバルセロナの名FWであり、まぁ監督として実績はあまりないけれど、間違いなくバルサイズムが身体中を血液として流れている男。つまりヤットはバルサの哲学を叩き込まれているのだ。しかもルーキーイヤーから開幕スタメンになったりと、その資質を見出されている。
国内でキャリアを過ごしたとはいえ、高いレベルの教育は受けていた。プラス元々の地頭も兼ね備えていたんだろう。そして、良くも悪くも責任感がない。それゆえ大胆に振る舞える。チーム戦術や決まり事を捨てて、己の感性に従って判断できる。
先程の小澤さんのセリフを少し訂正させてもらうと、「このレベル(=W杯の強豪相手)」では出来てなかったよ。相手が強くなるとへたれてた。
でもまぁ今のチームにヤットがいたら色々と違うものを繰り広げられたんだろうなぁ。


遠藤保仁は穏やかだし優しくていい男なんだけど、なんというかケレン味が無さすぎて勝負師として甘いところがあるんだよね。泥臭さとか執念みたいなものからは遠く離れている。
今日の放送を見て、僕は元日本代表監督のアルベルト・ザッケローニさんのインタビューを思い出した。
スポナビアプリ限定記事ということで大変読み辛く面倒ではあるんですが、このインタビューには極めて興味深い一節があるので、ぜひここで皆さんに紹介させていただきたい。
sports.yahoo.co.jp







やっぱりヤットはいい監督にはならない気がする。プロビンチャで理想のサッカーを呑気に追求する指揮官にはなれても、ビッグクラブやインターナショナルチームで鎬を削るような監督にはならないと思う。
冒頭のシーンの質問、もちろん難しいのはわかるんだけど、難しいと認めた上でその次を欲しかったのよ。極めて可能性の低い展望でもいい、極めて浮世離れした理想論でもいい、ほんの少しでも希望を語って欲しかったんだけど、それを笑ってお茶を濁したヤットは、監督としての資質に少し欠けていると思った。
先日この同じ番組に出演した玉田圭司は、この点ちょっと違ってた。語る言葉を持っているし、何より語りたそうにしていた。ここが大きいと思う。言語化も上手いし、知識もある、人の面倒を見るだけの懐の深さもある、そして理想も現実も真っ直ぐに理解した上で、期待に応えようとする覚悟がある。


まぁ慌てることはない。みんなわかってると思うけど、森保一はW杯に出たことない人なんだから、こんなもんよ。
ここから先はワールドカップ経験者が代表監督に就任していくはずだ。勝負はここから。
玉田もヤットもみんな、頑張ってくれ。期待してます。



最後の最後に、ちょっと関係ないんだけど。
前回大会の結果を受けてのザッケローニさんからのお言葉を貼りたいと思う。
さっき検索してたら偶然再び巡り合って、ちょっと目頭を熱くしてしまいました。
悔しくて惨めな結果に終わったけど、胸を張ろう。また次、頑張るしかない。

 試合を見ながら、今から5年前、親善試合で彼らを率いて、まさにこのベルギーと戦ったことを思い出していた。あのときは3-2で日本が勝利した。

 ベルギーは、日本にとって最悪のタイミングでリベンジを果たしたことになる。しかし泣くことはない。ロシアW杯を戦った日本の選手たちは掛け値なしに最高であった。きっと今後、長く語り継がれるものだと私は信じている。

 日本代表が去った後のロッカールームが、きれいに掃除されていたことについて、世界中が驚いているが、私は特に驚いたりはしない。日本人も驚かないだろう。いや、なんでこんなことで騒がれるのかと、別な意味で驚いているかもしれない。それだけ、日本での当たり前は、世界では貴重なことなのだ。日本はピッチの外でも誇りを持っていいと思う。

by ザッケローニ「心から日本を誇りに思う。アジア杯での対戦が楽しみだ」|サッカー代表|集英社のスポーツ総合雑誌 スポルティーバ 公式サイト web Sportiva