国内盤『Tha Carter 3』発売記念 Part 1

もはや自他共に認めるThe Best Rapper AliveなのがLil Wayne (aka Weezy)である。
もちろん何をもってbestにするかは人によって意見が分かれるところであり、僕自身まだ心の中で嫌々そう認識している部分があるのだが、無理矢理にでもそう思わせるような、そう感じざるを得ないような圧倒的にfreshで見事なperformanceがずっと続いてるのがWeezyだ。あの独特な爬虫類voiceを駆使してガッチリ韻にこだわったかと思えばいきなり歌い出したり、へにゃへにゃ酔拳を見せたりT-Painばりにフィルターを通したり、tightにon beatでかましてるいきなりその途中で急にoff beatでズルズルやったり、とにかく変幻自在なんですよ。Rapの表情も豊かでcolorfulだし、色彩が鮮やかな中にもどこかぶれない軸があるんです。まぁrapしてるsubjectは自慢話ばかりでマジメな話などほとんどしない("Gossip"ぐらい。それもホントとんでもなくカッコよかったけど)んですが、言葉選びも巧みで飽きさせません。例えばI married to this crazy bitch(=hiphop) Call me Kevin Federlineとか最高でしょ?内容はないけどlyrical。まぁそんな前置きはどうでもええのよ。今回は彼のちょっとした歴史について語ってみましょう。本当はこういうbiography、discography的なものはbounceの方を参照していただくのがベストなんですが、正直ガッカリしたんです。『Tha Carter2』の一番のトピックはIron Maiden使いではないし、『Like Father, Like Son』は決して『Tha Carter 2』路線の踏襲ではないでしょ。bounceみたいなメディアがウソ書いちゃアカンよ。そこら辺を訂正しつつ、ここ最近の彼の躍進の実態
を(僕のテンションがもつ限り)しっかりと綴っていきたい思います。では。

大雑把にLil Wayneの歴史を見る時、(4th albumの)『Tha Carter』以前と以後に分けられると思う。まずは以前から行きます。Hot Boysでの『Get It How U Live!』や『Guerrilla Warfare』、そして自身のソロ作『Tha Block Is Hot』、『Lights Out』、『500 Degreez』といった初期Weezyの盤を聴いていると、たしかにキャッチーさに対する感性なんかは鋭くて非凡さを持っていることがわかるけど、まだ声に張りがなくrapに存在感がない。例えるならD-BlockのSheek LouchであったりG-UnitのTony Yayoであったり、そういうサイドキック的な立ち位置にいたと思う。Murphy LeeとかSkip&Wacko、Slick Pulla&Blood Rawみたいなところです。Cash Money RecordsのセンパイであるJuvenileやB.G.の楽曲に客演してなかなかのアクセントを加えてたりしてます。B.G.の有名曲"Bling Bling"ではhookを担当したり、Juveの哀愁名曲"Back That Azz Up"ではoutroに絶妙なrapを加えたりといった働きです。後者では「Drop it like it's hot!」というフレーズを連発、それで彼の代名詞にもなってそういう曲名の曲も出しましたが、皆さんご存知のように今やDrop It Like It's HotといったらSnoopですよね。慎吾ママ山寺宏一状態(古
いね)、安藤美姫藤本美貴状態になって、Weezyは『Dedication』というmixtape(後述します)所収の"Nah This Ain't The Remix"にてちょびっと愚痴ったりしてます(「初めて聴いた時は取り乱しちゃってね..別にオレは嫉妬深いタイプの男じゃないけどさ、I made it a hot line, you made it a hot song」)。ただ、実際このdrop it like it's hotというフレーズ自体はJay-Zの"Cashmere Thoughts"のintro最後にも出てくるし..
閑話休題。デビューしてからしばらくは修行してたようなものです。しっかりとした商才を持つBirdman社長はわかっていて、将来的にCash Money Recordsを背負って立つrapperになるだろうこの少年(デビュー当時15歳)を育てるべく、いい舞台を用意しては積極的に参加させてたのです。2008年現在26歳のWeezyですが既にキャリア10年以上ということで、その経験は大きな武器になっています。また同僚のセンパイから身につけた技術なんかもあるでしょう。B.G.のズルズルながらrhythmにtightなflowなんかはモロだし、WayneがR&B曲に挑む際に出している切なさは、Juveの漂わす男の哀愁から得たテクニックな気がする。
ということで彼の初期ソロ作3つ、無理して聴かなくてもいいけど、悪い作品ではありません。社長に目をかけられているので、Mannie Freshもbest beatを彼に持っていきます。その結果レーベルの中で最もpopなbeatが集まったと言えるでしょう。特に1st『Tha Block Is Hot』は土臭くしたKanye West『Graduation』と言えそうなそんなpop性に優れたアルバムになってます。

そして機が熟し、ひとつのturning pointを迎えます。04年の4th『Tha Carter』である。
Hip HopにおいてCarterといえば、言うまでもなくShawn Carter aka Jay-Zが連想される。本名Dwayne CarterのLil Wayneとしては、同性の偉大な先達に多少あやかるつもりだったのかもしれません。リスナーたちがとてもお世話になっている翻訳家のJun Nishiharaさんに言わせれば「同じ性であることを誇示している」とのことらしいですが、僕の見方としては当時引退中(だったことに一応なっています)のJay-Zに代わり、オレこそがこれからのCarter代表だ!という気概的なモノが一番なんだと思います。
意気込みだけではありません。このアルバムから彼はRec.方法を替えています。Jay-ZやBiggieに代表されるようなfreestyle Rec.、つまりスタジオでbeatを聴き、ある程度頭の中で構成や韻を考えておいて、メモやノートとか無しの手ぶらでRec.室に入り、そのままbeatのdymamismに乗っかりながらrapをすることで、freshで生きた言葉が生まれるようなこのやり方を採用しているのです。Top of the headというのはある種の積み重ねであり、いかに歴史上のrhymeが出てくるかなんですよね。Weezyは経験豊富だしそこは大丈夫。上手くこなしていきます。さらにはこ
のやり方によって、Wayneのrapには力強さが出てきたのです。相変わらずの声質のまま、昔のひ弱さは消え、芯が出てきたと思う。段々主役らしさが出てきましたね。持ち前のキャッチーさも健在で、"Go DJ"や"This Is The Carter"といったlight bounceの名曲たちが生まれています。
今までのガキっぽさから脱皮しadultらしさを見せたこのアルバム(ジャケもカッコいいっす)によって、Jay-Zにも認められるのです。めぐってきたのが、04年末に出たDestiny's Child『Destiny Fulfilled』からの2nd Cut"Soldier"の客演。この超デカイメジャーな仕事が舞い込んでくることが、少しずつ超一流へと成長できてる証だが、この曲の客演rapperにWeezyとT.I.という当時まだ比較的無名な二人を推薦したのが、Jay-Z(=Beyonceの男)である。その後この二人はシーンを代表するrapperに育つわけだが、まさに慧眼なJay..まぁチームが弱小で投手がいな
いところにしょうがないから高2の途中に捕手からコンバートされたという稲尾和久を超弱小高校から見つけて獲得する西鉄スカウトほどではないけどね。まぁ、どうでもいいけど。