そして、国内盤など出ず

先日、父親の還暦祝いもかねて、ハワイに旅行へ行ってきたんですね。
アラモアナショッピングセンターで聞いた曲が、なかなかに印象的だったんです。声を聞いてJustin Bieberかなと思ったんですが、もしそうなら知っているはずだし、違うみたいだ。ということで誰だかわかりません。
その場で調べました。「My girl is superbad superbad...」みたいなリリック。
すると一発、そして納得。Jesse McCartneyか。確かにそうだな。



ホテルに帰り、すぐに検索。
6年ぶりとなる4th。『In Technicolor』。これがまた強烈な傑作に仕上がっているんだから、最高じゃないか。



大まかに言えば、MichaelとPrince。でもそれじゃあ当たり前すぎるから、ちょっと掘り下げてみると、20/20 ExperienceのJTだったり、昔お世話になったThe-Dreamだったり、"Get Lucky"だったり、あるいはJason MrazとかBobby V、Lloydあたりも思い浮かぶ。Bruno Marsとも言えるかもしれない。
誰々に似てるって言うのは、本当は評論として未熟なんだよね。でも、Jesse McCartneyについて喋るのであれば、この形が一番だと思う。個性を紹介していないようでいて、実はこれが彼の個性なんだと。
裏方づいた結果なのか、それとも俳優出身というキャリアが為せる業なのか、シーンを代表するポップシンガーたちのいいとこどりを実現させている。単なるモノマネに終わること無く、自分なりに咀嚼し解釈した上でのパフォーマンスなので、特にネガティブな感想にはならない。むしろ、おいしいとこどりなので無駄がなく、より高い純度で味わうことができる。
もちろん、Jesse本人の技量あってこそ。彼はボーカルレンジが広く、たくさんの旨味を持っているから、バリエーション豊かに気持ち良くなれる。アルバム単位で聴くにあたって、こんなに嬉しいことはないよね。
そして、Jesseの見事な歌唱を完璧に引き立たせた充実のトラックス。軽やかで、鮮やかで、美しくて、心地よくて。派手だけど、優しくて、きらきらと眩しいけど、爽やかな。本当に理想型なんだよ。The Elev3nとかR8DIOとか、正直誰なんだお前らは的な方々によるプロダクション。すごい仕事やないか。
で、考えたんだよね。こういうカメレオン的な人って誰だっけと考えたら、気付いたんです。
これはR. Kellyじゃないか。PopsのR. Kelly。それはそれは大変よろしい。
この先キャリアが長くなるにつれて、どんどん吸収して、どんどん成長していくからね。シンガーとしても、ソングライターとしても。
かつてのような王子様ルックスはかけらもなくなり、見栄えは地味で寂しい感じかもしれん。
でも、この人には地力がある。
表舞台に立つか、それとも再び裏方へとまわるのか、今の段階ではわからんけど。 
間違いなく、今後も注目。何かしらの形でシーンを支えてくれる。間違いない。




(振り返ります。長いです)
…思えば。
彼を知ったのはもちろん"Beautiful Soul"で、あれはもう10年前ですか。もちろん珠玉の名曲で、最高に好きですよ。当時はまさに美少年というルックス、王子様的な容姿でああいう甘い歌を囁かれたらたまらんだろうね。アルバムも1st、2ndとなかなかの充実っぷり。印象としてはモロにシンガーソングライター。ギターを手に歌うイメージ。ルックスこそアイドル風ですが、けっこう本格的。ホントよかったんだよ特にファーストアルバム。Eric Benetの1stをより青く纏め上げたような感じで。
その後はしばらく名前を聞かなかったよね。まぁこの手の歌手は寿命が長くならないだろうし、どんなに頑張ろうとバブルガムになるもんだから。
と思いきや、Leona Lewisの大ヒット曲"Bleeding Love"のソングライティングで久しぶりに名前が出てきます。Ryan Tedderとの共作なのでどちら主導かはわかりませんが、二人の作風を考えてみると、なんとなくJesseがメインでペンを握ったような気がします。
サビのリフレインはRihanna"Umbrella"に代表される当時のシーンを席巻していたThe-Dream節を意識したような仕上がりになっていて、こういう流行への目配せも出来るんだなと感心しつつ、あーでもサビはOneRepublicっぽいか、まぁわからんけど、でもAメロBメロにはいかにもな繊細さとLeonaさんの強さも感じさせるたくましいメロディが用意されていて、これはおそらくJesse McCartneyのペンによるものだろう。やっぱりこの人は力があるんだなと再発見しましたね、あの時。
そこからソングライター業が盛んになるのかと思いきやそうでもなく、むしろ久しぶりにソロが出る。『Departure』はよりシンガーとしての彼が出ている作品で、小ヒットした"Leavin"はThe-DreamとTricky Stewartに身をゆだねてたり、その他にもEric HudsonやSean Garrett、The Clutchといった当時の技術者たちに製作をお願いしていたりと、これまでと違う展開を見せていました。ただ、個性を出すには至らず、数多くのアーティストが存在ししのぎを削るアーバンポップス界隈において埋没してしまったのは否めないところ。
それから確か『Have It All』とかいうアルバムを出す予定だったと思うのですが結局お蔵入りなのか中止になったのか、出ず。その後も特に知らせはなかったのですが。
…よかったよ。真の才能は誰にも止めることはできないっていうことさ。わかっちゃいたが、心配になるからね。でもホントよかった。