Kanye West『The Life of Pablo』

「Chance (=Chance The Rapper) のせいだ。あいつのせいでアルバムが遅れる」という言い訳ツイートのあとも、なぜかやたら意味不明なつぶやきを連発し、そのたびに「STFU (=Shut the fuck up) さっさとアルバム出しやがれ」とリプライされ続けたりして、このあたりの茶番は笑えましたが。
とりあえず無事に届いたKanyeのニューアルバム。7th。3年ぶり。
なんというか…
相変わらず、よーわからんけど。
前作の宇宙規模のスケールではない。地面に足がついている。
ただもうフォーマットとしてはめちゃくちゃ。歌で始まったと思ったらいきなりゴスペル的な展開があったり、主役のラップは一瞬だったり、サンプリングされたトラックの上にまた別のサンプリングが重なったり。オフビートとか当たり前だし、滑舌もいい加減なもので、定期的に不穏な不協和音が包み込んでくれる。曲作りの公式なんてあったもんじゃない。
発表形態もTIDALのmp3だしね。もう囚われてないんだよな。(←ゴメン、ウソでした。mp3じゃなくてむしろlossless)
Kid Cudiとの出会い以降、彼の変幻自在なパフォーマンスに憧れを抱き、モノにしようと奮起してた感じですけど。
もはやキチガイでしかない。マジキチ。
やばい人が暴れてる。
ジャンルとかそんなチャチな物差しじゃ語れない。捉えようがなくて、なんか音楽みたいなモノとしか言いようがない。
芸術なのか。これは芸術と呼べるのか。わからん。
Andre 3000が粋なコーラスで彩る"30 Hours"とか、うねりながらグルーヴィーに突き進むトラック上でKendrickとガンガンひたすらラップする"No More Parties In L.A."とか。ここらへんを聴くと、やっぱりゲストに刺激されたりすると緊張感が出て、クオリティが上がって行くような気がするなぁ。
チョロっとFrank Oceanが出てくる"Wolves"はイマイチで残念。
今更Taylor Swiftネタを盛り込んだ"Famous"は滑ってるよね。Eminemの"Just Lose It"なみ。
最後もつれた原因の"Waves"が謎のスタジアム系で、これもわからん。
時折チグハグなところがあって、わざとなのか限界なのか。
個人的なハイライトは文字通り"Highlights"という曲。序盤のドリーミーなコーラスワークから気持ち良すぎるし、めっちゃ煽ってからKanyeのヴァース「まぁ穴兄弟じゃなかったら、オレとRay Jは友達になれたと思うよ」っていう最高すぎる糞リリック。こういうゴミっぷりがKanye Westのリリシズムの素晴らしさなんだよ。
"Through The Wire"から続く、Kanyeならではのリリカルワードプレイ。
こういう振る舞いでいいんだ。あんまり違う肌を出さなくていい。
"I Love Kanye"のラスト。「みんなのこと好きやで。ワイがワイのこと愛しとるみたいにな、ハハッ」。こんな感じでいいんだ。あんまり背伸びしなくていい。
うん。でもちょっとね、なんか終わりが近い気もする。
すぐではないにしろ、そう遠くないあたりに来てる感じが一瞬した。
そういうのがチラッと頭をよぎった。
死ぬなよ。
オレはおまえのこと愛してるから。間違いなく。