ココアがあれば嬉しい

そういえばR. Kellyクリスマスアルバムを出しましたよ。みなさん聴きましたか。
クリスマスアルバムって10月に出るもんだっけか。いくらなんでも早すぎるんちゃうかと。さすがに街の誰もクリスマス気分やクリスマスムードを持っていない今出してどうなるものかっていう。
まぁでもアメリカ音楽業界では、こういうクリスマスアルバムを発売するっていうのは、本当の一握りのトップアーティストのみに許された行為なのです。4thクオーターは決算期であり、トップアーティストのリリースが立て込む時期。そこでアルバムが出せる人は最前線を走る人たちだけであり、さらにそこからクリスマスを狙う権利があるのはもうまさにトップオブザトップのスーパースターオンリー。
だからそんなクリスマスアルバムを過去に2回リリースしたことがあるマライアキャリーというお方はもう尋常じゃないレベルの大スターなわけですね。
Kellzのキャリアや実績を思えば今頃かよっていう思いもありますが、とりあえず無事にここまでたどり着いたことをよしとしましょう。
それで肝心の内容なんですが、これが結構地味でつまらないんだよね。申し訳ないけど。
もちろんロバートはこう信仰が強いお方で、当然クリスマスも大切にしていると思うんだけど、それ以上にもっと創作や愛を大切にする人だから、やっぱりクリスマスっていう枠組みなんかに収まりきるわけがないっていう。
この人の持ち味って考えた際、まず浮かぶのがそのプロダクションの多彩さなんだよね。アルバム単位でバチッとテーマをひとつ決めて統一することもあれば、雑多で雑食な多様性で彩ることもあるんだけど、とにかく変幻自在で同じ空間にとどまることなく、常に芸術の創造を繰り返す。それはソングライティングのみならず、歌唱の面でも、ミュージックビデオの面でも。
今回はやっぱりクリスマスっていうデッカいテーマがあって、もう使い古されたテーマっていうか、使い古すも何も出涸らしの次元ですらないテーマなもんで、あらためてKellzの意欲的な持ち味が出たりする瞬間が生まれにくかったのかなぁと思う。
それかもしくは、まぁ言い方はアレやけどテーマが陳腐すぎて、全くKellzの創造意欲を掻き立てなかったのか。
とりあえずサウンドは単調で、美味しいモノは存在せず。
その代わりと言っては何ですが、今回の見どころ聴きどころというのは、歌詞にあります。
元々R. Kellyのソロデビューにあたって注目されていたのは"12 Play"における性描写であった。出発地点はけっこうリリカルなところのスタートだったはずで、それ以降も決して歌詞に不足はなかったはずなんだけど、実際はKellyの歌詞について語られることは本当に少ない。だいたい一番はサウンド。その次は歌唱。R. Kellyの歌詞なんてどうせ変態妄想なだけでしょっていう。
でも例のビデオがある分、説得力はあるんだよね。昔の逮捕されたあたりのSnoopと一緒で、妄想にとどまらず、こいつならマジでやりかねんと思わせるだけの経歴がある。
今回のクリスマスアルバムに魅力を見出すとすれば、Kelly流のクリスマスに引っ掛けたテキトーな歌詞ですね。「スノーマンはスノーガールを探してる」とか「Ms.サンタクロース」とか、「今年のクリスマスプレゼントは裸にリボンだけを巻いたオレだよ」とか、なんかそれっぽいフレーズを採用して、いつもの求愛をひたすらに繰り返している。
穏やかで淡々としたトラックに、ほんのちょっとクリスマス風の言葉が詰まってるだけのセックスワーズを延々と繰り返していく。そこに一瞬でもニヤッとできれば、多分ロバートも本望であろう。
「もしオレがサンタさんにウィッシュリストを出すとすれば、こう書くよ。毎日をクリスマスにしてくれ、ってね。」とか言ってたし、まぁあの人にとって今更クリスマスだから浮かれるとか別にないんだろうな。別にごくごく平凡な平日でも盛大にパーティーするし、平凡な平日でも盛大にセックスする。だからどうってことないっていう。そんなところじゃないの。


冬も近いね。あとちょっと。