No.8 『Gutta』Ace Hood

ここ最近、新しい才能があんまり出てこない米hiphopにおいて、久しぶりに新人ならではの勢い溢れるラップを見せてくれたのがAce Hoodである。

後見人DJ Khaledの"Standing On The Mountain Top"でのパフォーマンスを聴いた時点で、ヤツのキレはヤバイと判ってはいたんだが...

なんか、凄くハングリーでカッコイイんです。

シャープなトラックに唾が飛び散りそうなhard spittinの冒頭曲"I Don't Give A Fuck"にはじまり、(いつもの金太郎飴と思わせて実際そうなんだけど)今回はファルセットが気持ちいいAkon登場で華やぐ"Can't Stop"、まさにDrumma BoyなトラックにT.I.っぽいアドリブと力強いフローでブチかます"Get Em Up"、昼ドラみたいなアクの強いトラック(Gloria Estefanをサンプリング)の上でフロリダのセンパイTrick Daddy(好演!)と熱く放つ"Gutta"、むしろ昔のAkonっぽくやってるRock City(Butch Cassidy的存在か)がアクセントつけるドラマティックtrap"Guns High"、と序盤から立て続けにホットすぎる勢い溢れたアッパーたちのハイクオリティっぷり!さらには、Mobb Deep以上に壮絶で殺伐とした"Fed Bound"とか、名プロデューサーShawty ReddがMannie風のドラムを敷き、イカれ狂ったBrisco(怪演!)とのフレッシュコンビ曲"Can't See Y'all"、イントロはCool&Dre本来のアーバンなピアノなのに結局はtrapへと発展させてしまうその中でも熱いデリバリーで名曲へ導くAceの意地が光る"Ghetto"など、アルバムの半数を占めるアッパーの充実!!実にたまらんね。

もちろんアカン点もあるよ。
フロリダのアルバムに必須な涼しい系はどうだったかを見ると、モロ"Bust It Baby Pt.2"を思わせる(「my Gutta baby」はマズすぎる...)Trey Songzとの"Ride"と、オルゴール調のトラックにLloydのベタなフックをコピペした"Call Me"の二つで、創造性は皆無だね。
DJ Khaledのディレクションもあったのか、幅広さを確保するために、Pliesとの哀愁ストラグル曲"Stressin"とか、キッズコーラスを交えて熱くメッセージを込めた"Top Of The World"みたいな種類の曲も入っているが、特に見るべきところはないかな。
ジャケがヒドイ。
"Get Em Up"があるのに"Get Em"があるのもヒドイ。

でも、そんな不満にも目をつぶることが可能なくらい、実に見事なパフォーマンスなんです。

彼のラップを聴いてると、彼の出身地Floridaに拠点を置くNBAチームMiami Heatの若きエース、Dwayne Wadeのドライブを観た時のような、あの爽快感を覚えます。

ホント、爽快だ。終始ハイテンションでフレッシュな弾丸フローが貫かれていて、気持ちがいい。