No.20 『Crime Pays』Cam'ron

Cam'ronが優れたラッパーであることに今さら疑う余地などない。
Jadakissとのバンガー"Let's Talk About"はNYを興奮させたし、Clipseとの"Popular Demand (Popeyes)"は手堅いし、Gucci Mane"Stupid Wild"でも普通にカッコよかったからな。
ただ、この人もやたら不器用な生き様しか送れないタイプなんだよね。単に本人にやる気がないだけ?
今作もなんつーか……もうちょい改善できたかなぁ。
変なヤツだよ。先行カットは"(I Hate) My Job"。昔懐かしな"Whatever"風の気怠いピアノに乗せて語られる内容は、「朝7時に起きなきゃいけないのに寝すぎちまった……上司死ねし」的な社会派ソング!あ、あのKillaが?!こういう不況だから、Killaですらこんな曲作っちゃうのね……あと、"Silky (No Homo)"もシングルか。Motown風の雰囲気がまったり、ってイメチェン?!
アルバムを見ていくと、相変わらずスキットも含めて沢山詰め込むよなぁ。
前作の流れを汲むものとしては、1曲目によく来るタイプのロック"Intro"、細かい連打にソウルネタというDip印"Curve"、高圧的なトラックが緊張感を生む"Get It In Ohio"(なんでやねん)、これまた声ネタがやけに荘厳な"Who"、大仰なまでの勇壮さにいかにもなデリバリーが映えるベスト"Got It For Cheap"あたりがナイス。
前作中の"He Tried To Play Me"で編み出したミュージカルスタイルで言えば、"Never Ever"みたいなキモいのがあるし、ミュージカルフックの"Spend The Night"あたりがあるが、ビミョー。
南っぽい曲も継続中。いずれもビミョーだが、"Where I Know You From"がYoung Jeezy"Get Ya Mind Right"と同ネタなのは、前作の"Girls, Cash, Cars"のネタを"The Recession (Intro)"でパクられたからなのか?
他もあんまりだが、唯一ラストの"Bottom Of The Pussy"が意外と侮れない。ナスティ・ストーリーテリング・バラード、とでも呼ぶべきドープshitでして、R. Kellyばりの官能をCamの気まぐれで披露しています。
変なアルバムだ。ジャケからして意味不明。何ですかアレ。なんか農夫っぽいんですけど……もしかして"(I Hate) My Job"に合わせた?ありえんけど。

なんか、再び謎の存在に移行したKilla、という感じです。
個人的に注目していたビートのセレクションは、結局DipともNYとも言えないテキトーなところに落ち着き、相変わらずまとまりのないアルバムになりましたが。
やっぱりDip寄りの楽曲の方が総じて出来が良いところを鑑みると、元に戻ってほしいよなぁ……いつかまた3銃士の共演を拝める日が来てほしいんだが。
ってか、あんまりいい曲が無かった。スルメでもないし、フローもあんまり軽やかじゃないし、"Oh Boy"系もないし……
頼むからDipset復活してくれ。フロー回帰してくれ。それが一番です。