No.10 『The Ecstatic』Mos Def

(淡々と進んでますが、ここからTop 10です)

前々作の時のガラッと作風チェンジ、前作のまさかのジャケット事件のようなトピックが全くない。穏やかに静寂の中でひっそりとリリースされたMos Defの4th。
あっという間の16曲。ほとんど前に出してないスムースなラップ、ご機嫌な鼻唄、そして音楽的に豊潤すぎる渋いトラックたち……天才が気ままに出した、何となく今こういう気分なんですアルバムなのかな。
"Quiet Dog Bite Hard"とかタイトルからしてナイスだし、華やかに賑々しくポップに弾ける中で「shoot 'em up bang bang」とスピットするセンスがたまらない"Pistola"とか、この人はいちいち粋な発想をみせるんだよね。イマドキなtrap風でも豊かな展開を持たせつつアウトロの歌でらしくまとめ上げる"Life In Marvelous Times"なんかもMosならでは。
そして大ラスを飾る大曲、"Casa Bey"。母親にMos Defの"Casa Bey"っていい曲だね言われて慌てて聴いてみた記憶がありますが、こればかりは流石にビックリさせられたよね。
あまりにも鮮やかなトラック!!展開が美しすぎるトラックの上で楽しそうに泳ぐMosも気持ち良さそう。むしろこういうインストゥルメンタル、こういうジャズ曲があって、その上に乗せたフリースタイルなのかとも思える。
歌詞もいいよね。「bright light from a distant star」とか「miracles answer prayers」とか、素敵な言葉です。

サラッとしてて、どことなくNew Yorkらしさも漂わせた快作。
もちろん、僕の一番好きなMos Defのアルバムが『Black On Both Sides』であることに変更はない。"Love"の温かさとか、"Know That"のダイナミックさとか、"Fear Not Of Man"の聡明さとか、永遠に語り継ぐべきクラシックであるファーストには及ばないかもしれない。
ただ、この人の天才を確認するには十分な作品だと思う。『The Ecstatic』はそんな感じだ。