No.1 『Deeper Than Rap』Rick Ross

Rick Rossの『Deeper Than Rap』を今年度の1位にしました。
粗を探せば、少しはある。
まずジャケがダメ。Rossはわりとそういうところをちゃんとやってきた人なんで、今回の手抜きはビックリだし残念。
"Maybach Music II"がイマイチだった。前回のが大好きだったんです。ベースが響き、厳かで酒脱なトラックがド真ん中だったのに、今回のは騒がしくて好かん。T-Painもあんまりだし。
"Gunplay"っていう曲、明らかにDJ Khaled"Red Light"まんまやんけ。どちらも同じThe Inkredibles製作ですけど、さすがに似すぎ。
"Face"みたいなtrap、今更ビミョーじゃね?今年ほとんど誰もやってないと思うんだけど。
でもまぁ、問題点はそんなもん。後は文句ナシだし、非常にハイレベルな楽曲で占められている。Jeezy以降の楽曲に傾きすぎてた前作から変わって、再びFloridaバランスも考慮された、理想的な一枚になってます。
"Mafia Music"の渋さから最高。暗い砂漠をじっくり進んでいくようなトラックの上をRossがコクたっぷりにかましますが、いきなりクラシックだね。ディス曲としては威力がないが。
"Magnificent"も良いね。古い話をすればProdigy Of Mobb Deep"You Can Never Feel My Pain"と同ネタですが、あのきらびやかトラックをゴージャスなクルージング系の曲に仕立て上げたJ.U.S.T.I.C.E. Leagueの手腕も見事だし、John Legendによるフックも華やかだね。Rossもこういう曲調は苦にならないどころか、得意なんです。"Get Away"とか"Hit U From The Back"以来のアダルト曲になってます。
"Yacht Club"も良し。壮大なトラックだし、レゲエちっくのフックにまとめたのもグッドチョイスかと。Rossも手堅い。
"Usual Suspects"も最高。哀愁いっぱいでスムースなトラックとフック、そしてRossとNasの鉄壁の語り。お互いがお互いを引き立たせるような感じだね。声質の相性が抜群。
"All I Really Want"はあっさりキャッチー。軽めの曲ですがアルバムの流れ的に素晴らしい。The-Dreamも外してません。
"Rich Off Cocaine"も好きだなぁ。黄昏がいいじゃんね。Avery Stormも利いている。歌詞の方が完全フィクションなのは痛いんですが……
次の"Lay Back"はなんというか……ハリウッド系?感触としては1stにあった"Boss"に近いかもしれないけど、今回はさすがにやりすぎかな。でもまぁ、1曲ぐらいこういうのがあっても悪くはない。
"Murda Mami"は凡庸かも。T.I."No More Talk"っぽいトラックにて、恋人Foxyとやってますが、見るべきところはナシ。アメリカの人は恋人たちで曲を出すことに何の抵抗もないみたいだね。まあRossもテンションが高かったんでしょう。
"Gunplay"は先述したようにトラックが残念なんですが、Rossの猛々しいパフォーマンスは迫力あるね。
"Bossy Lady"も夕暮れの遊園地な風情があっていい。Rossには全く遊園地とか似合いませんが。
"Valley Of Death"は普通。DJ ToompがDon Cannon的なプロダクションを見せてますが、Rossには合ってない気がする。
そして大ラス"In Cold Blood"。恐らく憧れのセンパイScarfaceの同名曲を多少は意識したのかな、ドラマチックで映画音楽のようなスケールの大曲になりました。圧倒的なトラックの中で気を吐くRossの風格というか威厳が溢れた、これまたクラシックになっています。

実に素晴らしい。50とのしょうもないビーフとか、例の看守騒動とか、諸々の雑音を全て消し去るぐらい、傑作です。
ラップよりも深みがある、そんな音楽だと言えるでしょう。
後はライブをもうちょっと上手くなってくれれば最高です。
いずれにしろ、サンキューです。いいアルバムをありがとう。