No.12 『Nelly 5.0』Nelly

前作『Brass Knuckles』で内容のわりにやたら失敗扱いを受けてしまったNellyさん。Sweat/Suit路線を手堅く踏襲したというのにブランクが露骨にセールス低下に繋がったという形でしたが。
今作もやり方はさほど変えていない。喩えとして適切かどうかはわからないが、『Off The Wall』と『Thriller』の関係性に近いかもしれない。骨格や狙いを大きく変えたりせず、前作で物足りなかったポイントをしっかり強化してある。
一曲目は変わらずフロリダフレイバーだし、どこか一曲でアンダーグラウンドtrapスターを起用することも忘れない(今回はYo Gotti)。どちらも成功とは言いづらいが。
ハード曲は前作よりも落ちるかもしれないな。Kweliがカッチリかます"Go"はまあまあだったが、"1000 Stacks"は想定の範囲内だし、少し変則的な"Move That Body"もやや物足りない。
やはりキーとなるのはボーカルを招いた曲となる。Nellyのメロディアスな感性が発揮された曲はあったのでしょうか。
一部納得のいかない曲もあったけどね。前作でスムースな絡みをみせたKeriとの"Liv Tonight"が明らかにアルバム全体で浮いていたり、Chris Brownの出番が異様に抑えられてたり。
ただ、あとの曲は充分なクオリティを持っていると言えそう。楽しませてもらえるよ。
保守的ではありながらKellyとの"Gone"には唯一無二のケミストリーがやっぱりあるわけだし、注目のAvery Stormが支配力を見せつけた"If I Gave U 1"も成熟したソウル曲に仕上がっている。
これまた注目なRico Loveが絡む2曲"Making Movies"と"Don't It Feel Good"もなかなかの傑作ですよね。ベタで安易なR&Bヒップホップに陥らず、その上のレベルのソウルネスを目指して作ったという想いを感じさせます。
そして、"Just A Dream"。昨今ラッパーによる歌唱が通例化してきているけれども、誰しもがNellyほど歌えるわけではないわけで。この曲に込められた情感とか、繊細で一途な想いとか、美しい思い出に揺れる感情とか、やはりNellyならではの表現力なんだろう。これも特別な一曲なんだなと思う。
特別で言えば、相変わらずT.I.の存在感も別格ですね。昔からけっこう可愛がってきたこともあって、共演も数えること5回目になりますが、今回も鉄板の出来栄え。"She's So Fly"は"Show It To Me"を少し思い出させますが、より無理なく華麗にかましています。

で、総合的にどうだったの?という話になりますが。
正直、よくわかんないんだよね。良かったような気もするし、もうちょい物足りない気もする。
そりゃ改善の余地はあるんだけど、前作よりも練り込まれているのも十分わかる。
前作よりもゲストに頼ってないのは間違いない。呼んだゲストも、ネームバリューよりも効果を重視した人選になっているし。
まぁ、良かったかな。
楽曲に成熟があるし、キャッチーだし。
"Just A Dream"もいい曲だし。

ほぼ、完全復活かな。あとはNepと再び組んでくれれば、大満足。
頑張れ。