No.10 『Teflon Don』Rick Ross

このアルバムのバックグラウンド的なモノは7月15日の記事にたっぷり載せたので見ていただくとして。

さぁ、大きな期待と一抹の不安をもって迎えられた『Teflon Don』でありますけれども。
どうでしたか。

……なんか、微妙に燃えなかったな。前作よりも普通に劣る気がする。
あんまり単純な二元論で語るのは良くないかもしれないが、前作にて絶妙なところに落とされていたバランスが、今回はいくぶんかハード寄りに偏ってますよね。
かつてはBiggie感覚と呼ばれ、最近ではFloridaバランスと呼ばれる……っていうのは僕の中だけなんですが、せっかく見つけた絶妙なマスコアバランス、いわゆる硬軟のさじ加減を自らみすみす捨てるのは、どうだったのかね。
もちろんハードだろうがヤワだろうが、楽曲が純粋に見事だったら、別に何一つ文句は無いんですけど。
いやいやいや。楽曲、良くないっしょ、大して。


"Super High"は大好きです。時代を越えて愛されるような、大きなクラシックになっていると思います。
他はどうなんだ。とりあえず"Tears Of Joy"は良かったよな。No I.D.による泣きの入ったトラックがブルージーな逸曲で、Cee-Loのしゃがれた声が哀愁的なモノを助長するような。Cee-Lo繋がりか、何となくSantana"Do You Like The Way"を思い出したよ。

で、あとは……何かあったか?

ゴメン、僕には文句タラタラな内容だったよ。
一曲ずつ触れていきます。
"I'm Not A Star"からいきなり駄目でしょ。トラックは凡庸だし、何よりフローのチョイスをミスってる。乗っかりきれてないような印象。
"Free Mason"、決して悪くはないけどさ、突き抜けてない。ビートは渋いと言えなくもないがイマイチだし、演者の出来はどうなんだ。なんかなぁ。同じJohn Legend参加なら『The Albert Anastacia EP』に入ってた"Sweet Life"の方がベタで好きだけどな。Jayは普通。
第3弾の"Maybach Music III"はまあまあ良かったか。相当に豪奢なトラックで凄まじかった。でも期待値までは達してないかな。今年の客演仕事にハズレがなかったT.I.がイマイチだったのが残念。あんまり後ろにもたれかかられると面白くなくなる。その一方でKissが最高にブッ殺してたな。「Live for your kids/Die for yourself」とかカッコよすぎたね。Erykahもラグジュアリーで似合ってたし、全体の出来としては2よりは良好かと。ただ、1を越えるのは難しいよなぁ。あんな感じのシンプルでスマートな曲が究極なんだけどね、なんかシリーズを重ねるにつれ無駄に複雑になってしまっているという、うん。
"Live Fast, Die Young"はヘンテコ、かつ結構クセになる曲で割といいんだが、Kanyeが携わるということでかなり高くなったハードルはさすがに越えられなかったか……期待されたソウルフル系ではなく、あえてバウンシーなプロダクション。一聴して僕が連想したのはCam'ron"Dead Or Alive"です。サビの締め方は好き。ってか結構この曲好きだよ僕は。ただ、終わると思ったら終わらないのは無駄だった。
"No.1"は惜しかった。わりとフレッシュなアッパートラックが良かったからね。Rossもアップの方がダラけずにいいし。ただTreyのフックがねぇ、つまらん。もっと思いっきり歌い上げてほしかったんだが、これはつまらん。Diddyのヴァースも相変わらずだし。
"MC Hammer"はつまらんなぁ。Gucciのヴァースはさっぱりだったし、いかにも後から付け足した感が出過ぎていた。そういうところ少しでもケアしろよ。
"B.M.F.(Blowin' Money Fast)"もつまらんて。何もない。ってか、ホント"MC Hammer"に似てるよね。こんなそっくりなトラックしか作れないLex Lugarは言うまでもなく無能だし(Drumma Boyの後継者ですな)、そっくりな曲を連続で並べるRossもどうかしている。
"Aston Martin Music"にも期待してたんだが……トラックはいい。ChrisetteもギリOK。Drakeは変だったよ、さっきのGucciと一緒で後から付け足した感が残ってしまってる。まあDrakeのヴァースを作らなかったのはナイスだが、このメンツで意図していた楽曲を作り上げるまでには至らなかった、という印象。おそらく"Mafia Music 2"を完成させたような、メロウで綺麗な楽曲を狙ってたんだろうけど、未熟に終わってしまった。単純にDrakeがRossと合わない気がする。そもそも、Drake自体あんまラッパーの曲に客演できるタイプではないのか。歌声は無駄にアーバンだし、ラップはアレだしw
ラストの"All The Money In The World"、タイトルもまどろっこしいし、しかも似たような曲名がセカンドにあって紛らわしいし、大体コレ全くラストっぽくないな。ラストにtrapって一体どういう発想なんですか。Raphaelを起用するアイデアまでは最高だけど、こういうフックを歌わせるのはなんか違う。彼の声はもうちょっと気怠いというか、呑気というか。やっぱりSnoopとやってきたようなごく普通のソウル曲、あるいは2Pacの"Crooked Nigga Too"のリミックスみたいなスムース系、そういう感じの曲を用意すべきだった。それか普通にRaphael本人にトラック作ってもらうとか。



……という具合です。
なんか、小姑のような文章になってしまいました。
しかし、あの人の言葉を借りれば、「怒ってるんじゃない、これは愛なんだ」。
自分の持ち味を理解した上で、最高の音楽を作ってくれ。お願いします。
まあ、たまにはミスるよね、人間なんだしさ。

次は頼むよ。