逆に思い切って引き摺るか

今、アメリカで力のあるヒップホップクルーとして挙げられるのが、Young Money Cash Money Billionaires、Gettin' Out Our Dreams、そしてMaybach Music Groupの3つであろう。まぁエンタメ色が強いYMCMBは若干バブリーな人気でちょっと信用が置けないが、残りの2つであるGOODとMMGは非常に強力なスカッドを擁しており、コアにもマスにも訴えられる作品を届けてくれていて好感が持てる。


MMGから第2弾コンピ『Self Made, Vol. 2』が発売されました。
いよいよシーンのトップに立ったRick Ross、そんな彼が率いる実力派軍団のアルバムだから当然シーン全体に与える影響も強く、見逃せない一枚になるわけで。
前作コンピ『Vol. 1』は当時まだステータスを築けていなかったWaleとMeek Millのとにかくハングリーなパフォーマンスに圧倒され続ける熱いアルバムでして、このチャンスを逃すまいと飢えに飢えていた2人が暴れまくってました。その後のWaleとMeek Millの大躍進っぷりは周知の通りで、そのお膳立てを完璧に整えたRick Rossのビジョンの鋭さは特大の評価に値するとここであらためてもう一度強調しておきましょう。



さてVol. 2ですが。
さすがにWaleもMeek Millも少し落ち着きましたね。もちろん依然としてスキルフルで見事なライミングを披露してくれてますが、インパクトには欠けるかな。
ビートセレクションがやや地味という要因もありそう。前作でいうところの"Self Made"、"Tupac Back"、"Imma Boss"、"Pandemonium"みたいなド派手なトラックは特に選ばれてなく、全体のムードも前作とはけっこう違うかな。僕個人としては前作の多くを占めていたベタベタなLex Luger系が激減してるので満足なんだけどね。
冒頭を飾る"Power Circle"の渋さからして、もう昨年とは全く状況が違うことを示しているのがわかる。MMG自体がブランド化したし、3本柱は重鎮になったわけです。
そうなってくると期待したいのは後ろに控えるハングリーな第2部隊。WaleとMeek Millに続けと鼻息荒く構えてるヤツらに期待したいところ。
PillとTeedra Mosesドロップアウトした中、今作でチャンスを得たのがStalleyとOmarionである。
Stalleyはねぇ、ちょっと平凡なんだよね。Ohio出身ということで応援したいんだけど、なんか凡庸。Mixtapeのトラックスのチョイスは良かったんだけどね、声とかフローとか、特に何も残んなかったのが辛い。
そんで、注目なのがOmarionである。
ご存知あのOmarionでして、ほぼ同時期にデビューしたBobby VやChris Brown、Ne-YoにTrey Songzあたりが各々のキャリアをしっかり積み上げている中、ちょっと失速してしまったイメージ。一瞬YMCMBに所属してたけど我慢できずに飛び出してしまって、そしたらその直後ぐらいからYMCMBの快進撃が始まるという不運もあり、なかなか厳しそうな感じでしたが。
今作を聴く限り、また上手く軌道に乗れそうだ。しなやかなヒップホップソウルシンガーになれそう。Biggieと絡ませた"Let's Talk"にすごくその狙いを感じたんで。復活は十分にありえるはずだ。
なにせRick Rossがバックアップしてくれるのだから。デビューできたものの迷走してた感があったWaleを正しく導いたり、力がありながらサポートに恵まれなかったMeek Millをデビュー前にして人気爆発に持っていったりと、Rick Rossのこの手の手腕の確かさはホントKanye並みと言っていいだろう。
ただ、果たしてRick RossがR&Bシンガーの扱いにも長けてるのかはどうかは未知数。まだまだPuffと肩を並べるだけの実績がない。
んで個人的な趣味で言えば、Omarionにはわりと正統派でいてほしかったというのもある。Touch、Entourage、Electric、Just Can't Let You Goみたいな感じが僕は好きでね、まぁ確かに"Let's Talk"とかクソ格好いいけど、もっと王道を出してほしいと思ってます。もしソロ作でそういう展開をRossが用意してくれたら、もうたまらんけどね。



あとはゲストについて。
前作でもJeremihやJ. Cole、Curren$y、CyHi Da Prynceといったメンツが呼ばれていて、ここの鋭さも要注目なんですが。
Roscoe Dashは惜しかったね。個人的にすごく期待している万能型なんで、変に型に嵌まらず伸びていってほしいところ。
そしてKendrick Lamarは別格だ。冒頭曲のトリを飾るんですが、わりとまったりなマイクリレーが展開されている中、最後に凄まじく濃密なヴァースを軽々と残すあたり、やっぱりただごとじゃないなと。『Good Kid, Mad City』は今年の本命に間違いない。



最後にT-Painにも触れようと思う。この人は決して過去の人ではないからね。曲を出すたびに必ず工夫を凝らしてくるし、最近は根本のメロディも外してないからクオリティがホント高いんだよ。今が第二の全盛期と言っても差し支えないくらいに。
ここにきてヒップホップにふさわしい歌心の表出の仕方をつかんだみたいで、効果的なフックが連発されている。この人はまだまだ注目すべき人だ。




なんかよくわからん文章になっちゃった。ごめん。