また、いつものように夏をあきらめて

今年の本命、Frank Oceanの登場である。いよいよメジャーデビューです。




親しみやすく甘い歌声もそうだけど、ひねくれた物言いとフロー感がMusiq Soulchildに近いものを覚えるのは僕だけだろうか。「君のことが好きとかいうわけじゃなくて、ちょっといいかなと思っただけ」みたいな歌詞は、モロにMusiqチックな趣がある。
ただ、突き詰めればモテない男の妄想でしかないMusiqのリリックに対して、Frankのはモテる男の余裕が感じられる。余裕、そして圧倒的な自己肯定と、自己愛。完全なナルシシズムの塊。自分に酔ってる感じがサマになってるんだから、羨ましい限り。
内へ内へと、どんどん内側に向かいながら歌っていくのが、Maxwellのようである。自らの世界の中で自己完結していく、その独特の美意識が凄まじくアーティスティックで格好いい。
その結晶とも言うべきモノが、先日唐突に世に出されたカミングアウトのオープンレターである。ひとつひとつの言葉が美しく、繊細で、彼の鋭い感性が素直に表現された芸術。ゲイ人魂。
バイセクシャルであることをどうこう言う必要などないし、どうでもいい。ただ、その手紙の文章中にある通り、これでFrankが真の自由を手に入れることができたのだとしたら、それは表現者としてとてつもなく大きいことになる。Luther VandrossにもFreddie Mercuryにも許されなかった世界に突入できるFrankには、無限の可能性が広がっているはずだ。




そして、今日iTunes Storeで発売になったデビューアルバム『channel ORANGE』。
もう、本当に何も言葉を並べる必要がない。ただ単に傑作であり、見事な音楽です。
iTunesにCDを読み込ませ終わった時に発する音から始まってPlaystationの一連の起動音が流れる1曲目の"Start"から、雑踏の中へと消えていくラストの"End"まで、あっという間の56分。
ぜひ、聴いてみてください。間違いなく最高です。




国内盤は来月予定だから、我慢できる人はもう少し待ちましょうか。今しばらく『nostalgia, ULTRA.』でも聴きながら待ちましょう。もしかしたら、ボーナストラックで"Novacane"とか"Swim Good"とか入れてもらえるかもしれないし。