Jay-Z ft. Beyonce "Part II (On The Run)"

『Magna Carta... Holy Grail』はなかなかに渋くもシャープで、相変わらず一流のアルバムを持ってくるJiggaはすげーなと感心を覚えていたんですが。
そんな中で印象的だったのがこの"Part II (On The Run)"という曲ですね。

Part Iにあたる"'03 Bonnie & Clyde"は非常に凡庸極まりない曲で、ぐだぐだなまま終わっていく、まぁある意味BP2を象徴するような駄曲だったんですが。
このPart IIはいいですよね。歌パートが増えている中で、Beyonceの声が上手く活きている、活かされている。製作のクレジットに名を連ねるJames Fauntleroyによるメロディだと思われますが、彼ならではの低音を重ねていくメロの構成がBeyonceのボーカルの旨味を引き出しているし、曲に重みを出している。
浮ついていないのが前回との大きな違い。やはりテーマ的にももっと悲壮が必要だったし、今回はそれが的確に表現できていると思う。
二人とも歳を重ねていますからね。言葉も重みがあるし、それにふさわしいように正しく曲を作った、みたいな。

さて、そんなBeyonceといえば、つい最近サプライズという形でニューアルバムが出ました。
いくつかヒントらしいものもありつつ、発売されるまでその存在が明らかにされず、まさにサプライズで発売にこぎつけたあたり、依然としてこの夫婦の最大の持ち味であるメディアコントロールの完璧さ、隙のなさを見せつけたなとあらためて感じさせられましたが。
肝心の内容はいかがなんでしょう。まぁイマイチ聴きこんでいませんが。
うーん、どうしてもね、インパクトはないし、変に若くあろうとしている感じがあるような、まぁようわからんけど。
先日のツアータイトルが『Mrs. Carter』だったんで、ちょっと期待するところはあったんですね。これまで殊更に結婚しましたアピールをせず前と変わらない風に振る舞ってましたから。それがあえてああいうツアータイトルを持ってくることで、従来のイケイケの路線から一人の妻、母親というスタンスへと多少の意識改革はあったんかなと思われたんですが、音楽的にはそんなに変わっていないんかなと。
まだトレンドをセットする位置にいたいんだろうな。多分そうなんだろう。
しかし、ちょっときついね。もしそれを目指すなら、それに見合ったプロデューサーを探さなくちゃ。
保守的なメンツなわりに、今のトレンドを追ったような曲。なんとも爆発力を欠いた印象。
もっとしっとり方面に進んでほしい。アッパーにしてももっと余裕があるような。
前作の『4』は、そういう点で悪くなかった。"I Miss You"とか"Party"とか、現時点のBeyonceにふさわしい楽曲が揃っていたような気がする。
まぁ、新作あんまり聴いてないんであんまり言えんけどね。

"Superpower"を初めて聴いた時は、おい、これで終わりかよとビックリしましたが、けっこうクセになりますね。じわじわと重ねていくのが本当の意味でスーパーパワーなのかと、そういうのはよくわかるし、面白いね。