Justin Bieber ft. R. Kelly "PYD"

いろいろと醜聞もありますが、Justin Bieberは今もっとも信頼の置けるアーティストの一人であると言えるでしょう。
声変わりを経たセカンドアルバムも傑作でした。全体的には低温でクールに洗練された中に、人懐っこい表情が込められた充実の内容。子供だましとかいう風評被害を軽くぶっとばす、スケールの大きいアルバムでした。
そのセカンド『Believe』、根底にあったのはやはり『FutureSex/LoveSounds』でしょうね。すべての基本、すべてのフォーマットはここにあるという感じ。デビューの経緯なんかもアレだし、BieberはTimberlakeに感謝してもしきれないでしょ。

そんなJustin Bieberの2013年、期待されたサードアルバムのリリースこそなかったんですが、なんだか得体の知れないシングルたちがたくさんリリースされました。全部で10数枚。
一体どの程度の位置づけなのかは不明ですね...とか書こうと思ったら、どうやらアルバムがiTunesにてエクスクルーシブなものが出るとかなんとか。
よくわからんけど、月曜日に毎週リリースみたいな企画をやってたとかいうことで、いわゆるKanyeのGOOD Fridaysみたいな感じでしょうか。それのまとめが発売されましたよという話みたいです。へぇ。
一体どの程度の本気なのか、ちょっと図りかねますが。

10数曲のシングルも内容は様々でして、ウェッサイっぽいのから、Trey Songzっぽい路線とかありました。
個人的によかったのは2つ。
"Change Me"はシンプルなバラードでJustin Timberlake"Another Song (All Over Again)"を思い出させるというか、むしろGeorge Michael"Kissing A Fool"を思い出させるというか。白人のポップシンガーがたどり着く先は毎回ここなんですかね。この"Change Me"も名曲。
そしてもうひとつ僕が気に入ったのが今回の"PYD"であります。

PYTではなくPYD。Put You Downですね。そしてPretty Young Thingみたいな可愛らしさとは真逆の、生々しい性愛が描かれています。いや、描かれていません。具体的には描かれてませんが、ニュアンスとしてはそういうことです。
この曲を聴いて思ったのが、Justinのスマートにクロスオーバーできる感じは貴重でありがたいことだなぁということと、R. Kellyはとんでもない歌手だなぁということです。
特に後者。なんなんですかあのお方は。

JustinがImma put you downって言う分はいいんですよ。背伸びしてる感じが出てて、どこか微笑ましく感じられますから。
ところがKellsが同じフレーズを歌ったら、違う。もう生々しすぎる。本気。本気でやるつもり。場所とか誰が見てるとか構わず、本気でやる。
Justinが「コーヒーテーブルでやったる」とか歌ってても妄想の域を出ないんですね。「ダイニングテーブルでやるで」とか歌っても、そういうお年頃だもんね的に許されるし、それでおしまい。
しかしKellsが歌うとどうなる。恐ろしすぎますね。「バルコニーでぶちかます」。「クラブの駐車場、車の中でぶち込む」。説得力がある。ものすごい現実感があるというか、迫真の表現力というか。
演技ではなくて素でそういう人だからねKellsって恐らくは、だから本人的には何ひとつ意識してないのかもしれないけど、それならそれで恐ろしい歌手やで。
生まれながらのセックスシンガー。Marvin GayeとかTeddy Pendergrassなんか目じゃない。Princeが一番近いんだろうけど、もっと肉々しい。殿下はセックスに音楽的なドラマ性を求めていると思うんだけど、Kellsはただそのままセックスを描くということに執着していると思う。
なんやねん。セックスを描くということに執着?
ホント、文字にすると笑えますね。ひどすぎます。

そういや、どうでしたかねR. Kellyの新作『Black Panties』は。
まぁタイトルからしてひどすぎますが。
内容もどうですか。前作、前前作と唐突にオールディーズ路線というか、ごくごく普通の昔ながらソウル路線、めっちゃ普通の曲路線を展開して、それもそれで超一流の音楽に仕上げてて相変わらず凄すぎる人やなぁと感銘を受けたんですが。
再び12 Playモードに入るかと思ったら、どっちかというと『Double Up』のようなストリート寄りな感じ、タフな感じのアルバムだったかなぁと思いますね。
別にそういう路線も好きだし、『Double Up』は最高のアルバムでしたが、今回のはイマイチだったかな。ちょっと盛り上がりに欠けてしまった感じがする。
あれはよかったけどね、"Marry The Pussy"。ね、ほんとバカなタイトルだよな。ふざけすぎ。真面目な声でWill you marry me?なんて歌ってるんだからね。相手はPussyですよ。ほんとバカすぎる。最高や。