Mayer Hawthorne "Back Seat Lover"

とりあえずこの曲、一聴してみる。
まずはイントロ。
するとビックリ。あれ、これはなんだ、キリンジの新曲か?あいつら解散っていうか別れたんじゃないのか?って。
だけど、冷静になって考えてみる。たしかにキリンジっぽいが、今更もう高樹がこんなモロSteely Danっぽい曲をやるとも思えん。昔の曲をやることにさほど喜びを見出さないらしい高樹がまさかこんな『47'45"』の頃みたいな曲を演じたがるとも思えんしなぁ。
そうか、じゃあそのSteely Danの新曲かもな。まだまだFagenもBeckerも生きているし、そういうことか。
しかし、ボーカルが聞こえてきて、立ち止まる。あれ、こんな声ちゃうぞ。Fagenはもっとオッサンくさい声のはず。っていうか、もっと歌が下手なはずだ。こんなに上手くないぞFagen。

...っていう曲です。
Mayer Hawthorneさんの曲。この人は独特の感性を持っている人で、そのルックスの通り、ちょっと博士チックというかナードなノリで音楽を作る感じの人です。アルバム1枚目も2枚目も本当に変なアルバムに仕上がってました。めっちゃムーディーなようで、実はよくよく聴くとけっこうあっさりと軽めの、まぁなんか掴みどころのない曲ばっかりなんです。
ジャンル的にはソウルなのか、あるいは気軽なアメリカンポップスとかカントリーみたいな、でももっとディープなクラブミュージックのような重みもあるし、ボーカルもなんかソウルフルと言えそうな部分も含みつつ、なんかElvis Costelloみたいなシニカルなロック観もみせつつの、ホント捉えどころがない。
今年出たのがサードアルバムで、こちらは今まででたぶん一番シンプルな構成になっていると思われますね。AORというか、Steely Danっぽい内容。
いいと思います。あんまりそういう人最近いないしね。

うん、あとさっきキリンジが解散とか書きましたが、正しくは泰行が脱退しただけですからね。それに別に二人とも生きていますし、大丈夫ですよ。
お兄さんの方は間違いなく素晴らしいものを届けてくれるはず。いろいろと気持ちも変わって、新たな創造意欲も芽生えて、また再びあの鬼才っぷりが炸裂してくれるでしょう。『Home Ground』も素敵なソロワークスでしたが、あのとき以上にコンセントレイトしたアルバムを期待していいはずです。噂に聞くと、バンドの新メンバーは相当やり手みたいですし、新生KIRINJIのレコーディングアーティストとしての未知なるポテンシャルには大きく期待できますね。
ただその一方、僕は誠に勝手ながら泰行の活動がちょっと心配なんですね。自ら退路を絶って独り立ちを果たし、おそらく気合い十分なんでしょうが、個人的には馬の骨の活動に気合いとか力みはフィットしないと思うんですね。言い方はよくないですが、それこそ片手間ぐらいにこなした方がよりよいパフォーマンスにつながる音楽性だと思うんです馬の骨って。だから、軽やかな中にダイナミックさと可愛らしさを湛えた馬の骨のファーストセカンドの作風がいずれ聴けるであろう新作の中でどうなっていくのか、注目ですね。
サンキューほりごめズ。フォーエバーほりごめズ。