We Still In This Bitch

手癖ってあるよね。ついつい出ちゃうアレ。
僕も。なんか油断してると大体同じパターンで文章を作っちゃう。構成とかオチの感じとか。批評の内容とか。
50 Centの音楽もそう。"Wanksta"の頃から何も変わらないし、目新しくないベタなアルバム。
それが許されるくらいの大物になればいい。サザンのような、ミスチルのような、R. Kellyのような、「らしいよね」って言葉で認めてもらえる大御所になればいい。
たまに評論家が「らしい」オンリーで片付けようとしてる場面がありますが、ホント糞だよな。全然批評になっていないっていう。北の富士勝昭の「○○らしい相撲が〜」一辺倒解説は糞すぎる。ホント消えてほしい。
「じゃあ朝日は何と言って褒められたいの?」「...『朝日らしいね』」

安定って最高だからね。波風が立たない日々がすごくいとおしくて、社会人になってホントよかったと思う次第です。
やっぱ学生時代はいろいろある。なんやかんや毎日がスペクタクル。
若かったから。若さゆえ頑張れたんだろうな。

何の話かっていうと、aikoのアルバムの話をしようと思ってたのよ。
出だしで風呂敷思いっきり広げちゃって、思いのほかこのまま永久にガンガン語れそうだけど、本来の目的へと進んでいこう。

泡のような愛だった』というアルバムが発売されて1週間。
全然期待していなかった。ここ8年くらいの最近のアルバムには満足できてなかった。最近シングルですら真面目に追っていなかった。しかも、特典を分けて初回と通常の両方を買わせる商法を採用してて、いよいよ本格的に厳しいんかなと思ってた。
ところが、全然そんなことはなかった。
むしろ、すごく良かった。嬉しくなるくらい内容が良かった。
鮮やかだし、とても充実している。
めっちゃインスピレーショナルなんだけど、それが本当に大きくて、僕のキャパを超えそうな感じに大きいんで、上手く褒められるか自信がない。
頑張ろう。

aikoは確立されたポジションにいて、いくつかフォロワーらしき者もいたけど届かず消えていき、結果として2000年ぐらいからずっとそのままオンリーワンでい続けています。すごいよね。
上原浩治高橋由伸高橋尚成と同い年の今年で39になるけども、まぁ変わらずいられて。
それこそ定番の作風でぼちぼち曲を作っても許されるような立ち位置にいて。aiko節を繰り返すだけでも問題ないくらいのポジション。
個人的な歴史観を述べると、「『夏服』でピークを迎え、ちょっと複雑になった『秋そばにいるよ』で落ちてしまい危うくなりかけるも、精力的だった『暁のラブレター』でいくぶんか持ち直し、安定感を見せた『夢の中のまっすぐな道』で復活、ただそこからはやや焼き直し感が強まっていき、『彼女』は良作も目新しさがほとんどなく、『秘密』で流麗なアレンジを見せるも繋がって行かず、『BABY』や『時のシルエット』ではよりもっと保守的な作風で無難にこなしていった。」という感じです。
セールスはずっと安定している。シングルもコンスタントだし。
でも、ここ最近はワンパターンに陥っていた。よくあるメロディ、定番のアレンジ、安定の歌詞世界に、まったく代わり映えのないPV。
そんな芸術は駄目だ。アーティスティックな活動とは言えない。

こんな状況下でのニューアルバム。
再生ボタンを押し、流れてくるピアノの遊びのような音からして、全然ちがう。
今度ばかりは違うぞと。なめんなよっていう決意。
1曲目"明日の歌"で見せるとても直感的で才気走ったワードプレイ。なんだか、あの日初めて聴いた大名曲"花火"を思い出させます。そう。初めて聴いたaikoはこんな感じだったんだ。印象的な声、印象的なフレーズが直に脳へと響いていくこの感じ。
アルバムはこのまま、初期衝動のようなインパクトを残す曲ばかりで構成されている。
ダイナミックな展開で彩られた気持ちよすぎるアッパー"染まる夢"も傑作、めっちゃキリンジ/冨田恵一マナーでかましAOR"距離"も傑作、爽やかなパワーポップで仕上げた"透明ドロップ"も傑作、もろOverjoyedながらも繊細により情感豊かに紡いだ"大切なひと"も傑作、ホントどこをどう切り取っても傑作なんです。
ここ最近のマンネリからは考えられないほどの意欲。色鮮やかなトラックスにaikoのボーカルが乗るってことが、こんなにも素晴らしいことだなんて。
ほんと先行シングルの段階では想像もできなかったよね。"Loveletter"や"君の隣"も頑張ったけど従来の作風から大きくは離れてはいないし、"4月の雨"も"KissHug"の流れを汲むもので新しいものではなかった。
そんな中で果敢に勝負した。恐れることなく、大胆に創造してみせたこの傑作アルバム。

嬉しいんだよね。aikoが逃げることなく、もう一度クリエイティブに勝負してくれたことが、十数年来のファンとしてすごく嬉しい。