No.11 "Get a Feel" 星野源

"恋"という大ヒットシングルの後に情緒溢れる名曲"Family Song"。この流れは最高だった。
それに続くのは映画ドラえもんの主題歌。これもオーケー。わかる。
さらにそこから朝ドラ主題歌の"アイデア"。"恋"の焼き直しなようでいて、もうちょっと複雑で意地が垣間見える曲で、これもギリオーケー。
そして、年末に届いたのが待望のオリジナルアルバム『Pop Virus』。
ここまでの展開に問題はない。ちょっとそれぞれに間隔が開きすぎたかなぁっていう気もする。できればこのアルバムは"恋"の後の半年以内、それか遅くとも2017年内には出して欲しかったけど、まぁ忙しかったのよねわかるよ。


前作『Yellow Dancer』でのディスコファンク路線によって得られた好感触をそのまま"恋"に繋げたっていうところでしたが、今作はそれ半分プラスかつてのシンガーソングライター路線半分っていうところかな。
一番に思ったのが、コツを掴んだんだろうなっていうことですね。
アルバムを聴いてて、あーまぁこれはスキップ曲かなぁなんて途中で思う曲であっても、どこかにちょっといいフレーズがあったり、魅力的なブリッジがあったりして、あーだったら案外悪くないかっていう気にさせちゃうっていう、そういう曲で占められているアルバムです。14曲入りという今時珍しいボリュームですが、完全なる捨て曲はほとんどない。
言うなれば田村淳みたいなアルバムです。田村淳ってロンブーのあの人ね。女の子からしたら別にイケメンじゃないけど、まぁいいところはそりゃあるわけだし、セックスしてもいいよっていう感じ。男からしてもまぁ悪いやつではないし、芸人として当然そこそこに有能ではあるので、嫌う必要はないかなっていう感じ。
まぁぶっちゃければ必要最低限でしかない。どうせだったら最初から最後まで完璧な曲を作ってくださいよっていうところなんだけど、やっぱりほら忙しいし、全部セルフプロデュースだし、難しいんだろう。
だから要所だけ押さえる。物足りなさはあるかもしれないが、全部の曲に魅力を少しづつ振り分ける。
まぁ、いいんじゃないか。
大事なのは、曲の魅力なるものを体得したということ。要所を押さえるって言ったところでその要所がわからなかったら不可能な訳ですよ。実際、その要所をわかっていない歌手の方が現状圧倒的に多いんですが。
ソロデビューが2010年なので8年目ですか。時間はかかりましたけど、星野源はそれを手に入れたと思いますね。自分のアイデンティティの中で世間に喜んでもらえる要素は何かをついに見つけることができた。
だからこの先はモチベーションさえ続けば大外しはしないと思う。
常に完璧な曲を作れるかというと微妙だろうね、そこまでの才能はないと僕は思ってるので。
でもポピュラリティを得る楽曲を作るコツは完全に掴んだと思う。どこをキメれば好かれるかをわかった。
だからCMとかドラマの曲を作ることはガンガンできるでしょう。サビだけいい曲であれば、主題歌や挿入歌として機能するからね。
例え自分の方向性と違う依頼が舞い込んだとしても、それこそ"アイデア"の1番と2番以降で展開をガラリと変えてみせたように、多少は自分を殺してでも仕事に殉ずることもできる。
楽家として、間違いなくステージを上げたと思います。


ただ、今回のアルバムはひとつのムーブメントの終わりな気がしている。
Virusっていう言葉に込められた思いを考えると、このアルバムは区切りとして丁度良すぎるんだよね。
だいぶ頑張ったと思うので、しばらくは音楽から離れるんじゃないか。
そして多分、今年は俳優業の方に重心を置くと思う。平匡さんからだいぶ時も経ったしね。
どうなるかわかりませんが、様子を見守りましょう。