Justin Timberlake "You Got It On"

『The 20/20 Experience』で言えば、1よりも圧倒的に2が好きですね。
常に勝負している感じ。それも別に奇を衒ったりアウトローにこだわったりとかいうわけではなく、ごくごくピボットの軸足をポップスのど真ん中に置くことを前提にしつつ、そこから長ーい足で各分野へとアプローチしている。
Timbaland節との完璧な融合を果たした名曲"TKO"とか、Drakeの存在を含め自然とゴージャスな華であふれた"Cabaret"とか、アルバム全体でめまぐるしくありながら一つ筋を通した理想形と言いたくなります。
しかし、あえてここでランクインしたのが、その中でひと際地味なソウル"You Got It On"なんですね。

基本イケイケのオラオラで構成されるJustinの歌詞世界では珍しい等身大系の歌詞。だって「君はそのまんまでええんやで」みたいな歌詞を好んで歌うような人ではないし。そこは結婚を経て、何かしら価値観とかに反映されたのか。あるいはDrakeやJ. Cole、Big Seanあたりの背伸びしないトレンドに乗っかったのか。

そしてそれよりも何よりも注目なのが、Justinならではの緊張とかとは真逆の、とにかく大らかでゆるやかなプロダクション。
多少のビートの跳ねはあるにしろ、根本には6070年代のスイートソウルのエッセンスを曲の旨味として成り立たせているのが、とても興味深い。
なぜなら、僕はこの曲を聴いて一番に思い浮かべたのが、Al Greenではなく、Robin Thickeだからだ。

いつも申し上げてるように、すべては2002年の『Justified』に端を発しているんです。ポップミュージックの有り様や意識を大きく変えてしまったのがそのアルバムであり、Justin Timberlakeである。
業界のフォーマットを変えたわけですが、細かく見ると白人のソウルシンガーを増やすという地味な貢献にも繋がっており、RobinだけでなくMayer HawthorneやJohn Westとかいろいろと登場する遠因となったわけです(Justin BieberやConor Maynardとかも広い意味ではその枠組みの中だと言えるかもしれない)。
まぁ、白人の歌手は少なからずJustinの洗礼を受け、意識させられたと。

そういう雁字搦めの意識に縛られた中から、やはりRobin Thickeは(贔屓目は多分にありますが)奮闘して自分を探していたんだなぁと今あらためて考え直しても、そう思いますね。
ポップにしてもより明るくてソウルフルであることを目指していたし、ダンスミュージックにしてもよりクラシカルなディスコ寄りの方向へ進んでいましたから。
Justinもディスコに近づいた瞬間がありますよね。Snoop DoggとCharlie Wilsonとの3本柱でかました2004年の名曲"Signs"。もちろん、その曲のプロデュースは2013年のMVPの一人で、Robin Thickeの大ブレイクに大きく関わった名将Pharrellでした。

...なんていう取り留めのない話になっていますが。
本家のJustinにオマージュされたということが、本当の意味でRobinのアーティストとしての一本立ちを象徴しているのかななんて、思います。なんだかとてもいい気持ちになりました。

そして、この曲"You Got It On"も最高に気持ちがいい。エンディングまでひたすら大らかに包み込んでくれる。