J. Cole ft. Miguel "Power Trip"

この曲は普通にラブソングですよね。一応その対象は女性とヒップホップっていう定番のものらしいですが、うん、こうして見るとサブジェクトとしてはDrakeとさほど変わらないんだろうな。意外と、いやあんまり意外じゃないかもしれんけどJ. Coleはラブソングが多い。"Like A Star"とか名曲だし。そうなってくるとDrakeみたいなもんやね。ラップの上手いDrakeといったところか。
ただ、Drakeと違って自己プロデュースが上手くない。すごくそう思います。

J. Coleについて触れるとき、僕はいつも彼の自作自演スタイルに言及しちゃいます。
彼はDIY精神が豊富なのか、いつも自分でトラックを作っちゃう。ほとんどの曲が自ら製作したビートなんですね。そして、僕はいつもそのクオリティに不満を覚えるという。
『Born Sinner』はなかなかにクリティカリーアクレイムでして、評判も上々のようですが。僕は2、3回しか聴いてません。申し訳ないが全然おもしろくない。
ラップの内容はいいんですよ。歌詞は鋭いし、ラップも巧み。そこらへんは超一流です、間違いなく。
ただトラックが弱い。弱いし、なんか薄くて足りない。
一生懸命作ってるんだろうなというのはわかるんだけど、わりとオーソドックスで基本的なビートの上に何かしらスペシャルなエッセンスを入れてほしいところなんですが、それがセカンドになっても実現されず。

けっこう期待してたんよ。先行カットの2つ、"Miss America"とこの"Power Trip"にはそういう工夫みたいなものを少なからず感じましたから。
特に"Power Trip"はキャッチーだし、構成も優れていると思うんだよね。ようやくこのレベルのプロダクションが実現できたのかとセカンドアルバムに期待を持たせたんですが。
この人はどうも薄味にしたがる。もっとベタにわかりやすいポップ性を持ち込んでもいいと思うんだよね。J. Coleというキャラクター的にも、彼が扱うサブジェクト的にも、もっとポップでいい。
Miguelに歌わせたのはJay-Zらしいし、Coleは決定的にそういうバランス感覚が欠けているんだろうな。そこが非常にもったいない。そこさえわかれば、この人はKanye Westと肩を並べる存在になれると思うのに。

Drakeは若干あざといけども、しかし意識してそういうポップ性を出しているし、それが似合ってて上手くいっている。
奴にはNoah "40" Shebibっていう有能なサウンドメーカーがいるから間違いないんだよね。Drakeの音楽的なベクトルをしっかりと理解し、そこに忠実なトラックを確実に用意できるから、Drakeは安定している。
Coleにもそういうパートナーが見つかればいいんだけど。なんか探す気なさそうだな。