J. Cole "Cole Summer"

今年一番よく聴いた曲がこちらの"Cole Summer"であります。

この歌はJ. Coleがセカンドアルバムをリリースする前に出したミックステープ『Truly Yours 2』に収録されており、曲の冒頭では「This right here is not a preview」としきりに主張されています。実際、あんまりこの曲とBorn Sinnerに関連は見出せませんでしたが、どうせなら『Born Sinner』もこんな感じの曲をたくさん入れてほしかった...

ゆったりとしたサンプリングループの上で、Coleがリラックスして雑談をしてくれています。自分の仕事への誇り、さらには男のちっぽけなプライドというかこだわりも見せつつ、時に将来への不安も感じながら、それでもオレは問題ないよっていう自負を滲ませながら、爽やかにラップしています。名曲。
この力の抜けたラップこそ、やはり本当の意味での最新ラップですよね。このごくごくリアルな内容、セレブリティのハイオフライフでもなく、かといってゲットーでのストラグルとかでもなく、あくまでも等身大の、本当に一般人に近いような目線で重ねられている言葉たち。今はこういう内容が受ける。
なんというか、ブログやツイッターで発しているかのような言葉が、そのままリリックになったかのよう。さぁラップしてやるぞとかいう感じでもなく、ごく自然に近況報告するような。AMラジオの冒頭、リスナーのネタのハガキを読むコーナーをやる前にパーソナリティが行うフリートークのような。
それがいいんだよね。聴いてて楽しい。雑談に含蓄とかないかもしれんけど、それはそれでいい。楽しいもん。
Drakeとストリップクラブに行って、それで投げた札束がDrakeよりも少なくて、そしたらストリッパーに「あんた、ラッパーなんでしょ、もっとチップちょうだいよ」なんて言われて、それを受けて一言「まだプッシー見せてくれてないやん、もっと脱いでよ」っていうお話とか。
全然むずかしくないし、全然浮世離れした話でもない。こういう普通の話が今のトレンド。Coleはそういうのが抜群に上手い人。

だからこそ、Coleにはちゃんとしたハイレベルのトラックを用意してほしいと強く思います。
ミックステープに外れはなく、オリジナルアルバムには当たりがない。これが示すのは、自分の曲のトラックは全然ダメで、他人のトラックを拝借したら最強の曲が出来上がるという事実。つまりいいトラックを探して来い、いいプロデューサーに作ってもらえよということ。
自分で作るにしても、もっとサンプリングを使っていった方がよさげだろうね。
なんとかしてほしい。


...以上で今年の音楽レビューは終わりになります。
今年はけっこう大物がたくさんリリースしましたが、来年こそは誰かいい新人が出てきてくれるといいですね。
ヒップホップ業界と、R&B業界と、あとJ-Pop業界と、この3つで誰か活きのいい新人が出てきてくれることを祈りましょう。
来年もよろしく。