Terrace Martin "Move On"

Terrace Martinっていう人はいわゆるSnoop軍団のプロデューサーのひとりでして、非常にJazz寄りのプロダクションに魅力があります。生演奏の質感とか、豊かなメロディがとても心地よく彩ってくれる、なかなか力のあるプロデューサーさんなんです。
まぁ知らんがなみたいな感じでしょうが、このリーダー作も充実したトラックリスティングになっており、聴きごたえがたっぷりあります。
こういうプロデューサーのリーダー作品ではおなじみのパターンである豪華ゲストの方も当然のように見逃せませんが、このランキングのほうはあえてゲストなしのこの曲"Move On"をとりあげましょう。

まずは聴いてみてください。本当に素晴らしいソウル曲でしょう。
何とも言えずラグジュアリーでゴージャスで、それでいて情感豊かに訴えかけるメロディの素晴らしさが最高に気持ちいいんですよ。
そして、思い出されるのがDeBargeの"I Like It"...というかWarren Gの"I Want It All"。

Eminem効果による復活とともに『2001』で本格的に前線に復帰したDr. Dreがいて、さらにはSnoopも『No Limit Top Dogg』で再び存在感を発揮、Kuruptも傑作『Tha Streetz Iz A Mutha』で健在っぷりをアピールし、Xzibitあたりも我こそはと暴れまくっていた90年代終盤から2000年代序盤にかけて。Death Rowの呪いをようやく乗り越えた先にたどり着いたウェッサイシーンにとって第2のブーム、まぁプチブームみたいなもんかもしれないが、ひとつ春がやってきたと、今こうして歴史を振り返ってみたらそう言えるんじゃないでしょうか。
そんな西において、何一つ力むことなく、己を変えることなく我流を淡々と磨き続けたWarren Gによる大傑作『I Want It All』が登場したのもこの時期でした。
誰もいわないけども、それこそ南におけるOutkastと同じだけの意味、存在意義があると思うんです。
誰が何を言おうとも、誰に何を言われようとも、おれたちサウスサイドにはOutkastの二人がいる。
それと全く同じように。
誰が何を言おうとも、誰に何を言われようとも、おれたちウェッサイにはWarren Gがいる。
もっとそれを強く認識してほしい。

っていうTerrace Martin関係ない話ばかりですが。

しかし、まぁ前にも言ったような気がするけど、今最高にいいよ、西は。
若頭のKendrickがいて、それとは別に孤高の存在としてTyler, The Creatorがいる。Dre、Snoop、Gameの重鎮たちも余裕で最前線を涼しげに走っているし、Odd Future軍団やProblemあたりも後に続こうと奮闘している。
Nateはもういないし、あの人の代わりなどこの世に存在するはずもないんだけど、こんなにも今ウェッサイは栄えているんです。
Chronic時代2001時代に続く、第3次ウェッサイ時代。
『good kid, m.A.A.d city』が『Chronic』『2001』に該当する作品だとすれば、『Regulate... The G funk Era』『I Want It All』に該当するのが、今回の『3ChordFold』というわけだね。

また時が経ち、より強い想いをもってこのアルバムが聴けそうな気がする。いずれその意義が強く印象深いものになりそう。