Mariah Carey ft. Miguel "#Beautiful"

お茶の間化が止まらないヒップホップにおいて欠かせないのがフック、いわゆるサビですね。できるだけキャッチーなほうがいい。その方がラジオでかかりやすくなるし、リングトーンとしても活躍の機会が出てくるからね。
キャッチーにするためにはどうすればいいか。一番手っ取り早いのが、誰かゲストの歌手にフックだけ歌ってもらうというやり方です。ラッパーは基本歌わない、あるいは歌えないということですから、誰かいい感じの歌手の手を借りるわけです。
どういう歌手を連れてくればいいか。そりゃその瞬間で売れている人を呼べたらそれに越したことはない。だからといって超ポップな白人をヒップホップ曲に呼ぶのは禁じ手であろう。いくら軟弱化したヒップホップといえども、そこだけは最低限のルールが残っている。
となると、同じブラックミュージックの中のR&Bシンガーという選択肢が最も妥当でかつ効果的なゲストシンガーということになります。

とかいう説明を一通りしまして、そんなフックゲームには毎年いろんな売れっ子が集うわけですね。
今一番きてるフックシンガーはおそらくMiguelでしょう。
青くてまっすぐな声、そして鬱陶しいほど情熱的そうなキャラ。今最もゲストに呼ばれているR&Bシンガーと言えるでしょう。まぁセカンドアルバムは傑作でしたからね。

このマライアの新曲、フックどころか一番まるまる歌うのがMiguelであります。歌うだけでなく、プロデュースも共同で行うという大フィーチャー。
すっかり大御所として存在する女帝マライアの先行カットの曲に招かれるという意味は、僕ら日本人が想像する以上に大きい意味を持っていると思います。

いい曲なんですよね。カントリーっぽく、どこか大らかでのどかで大味で、ただR&Bらしい切なさと優しさも兼ね備えた、素敵な曲になっていて、Miguelの本気モードが見られたんだなぁって思います。
ただ、その一方でプロデューサーとしてどうかなと。明らかに主役を喰うつもりでやっているだろうって。
Miguelの世界観ってあるんですよね。独特の美意識というか、彼ならではの世界があって、そこにマライアを招いた。それは別にいいよ。
でも主役を引き立たせるために何か策を施したのかというと、多分まったくないんですよね。ただただMiguel節が展開されただけ。
もちろんマライアはMiguel節を要求したと思う。そりゃそうだ。Miguelをアーティストとして、ソングライターとして評価したからこそ、今回の曲が産まれた。ただ、その先にもっとスペシャルなものがあるべき。Miguel節の中にマライアの持ち味が出るような工夫が何かあってもよかったんじゃないかと、曲を聴いて思う。
主役が完全にMiguelだからね。それはプロデューサーとしてどうなのって。
出来ればR. Kellyみたいなプロダクションが理想だよね。自分の世界に招き入れながら、そのアーティストの特長が曲の中で最大に発露するような、そんな仕事ができたらいい。
"Laundromat"、"At Your Best"、"Any Time, Any Place"、"You Are Not Alone"、"Fortunate"、"Outrageous"、"Charlie, Last Name Wilson"みたいなね。
まぁ、ムズイわな。