Tyler, The Creator "48"

48。日本で48っていうともうアレしかないんですが、この曲はアメリカの48州ということですね。48州にブツをお届けしてやるぜっていう。まぁ、さすがにアラスカとハワイは遠いからね、ゴメンね的な。

テーマとしてはヒップホップ的にお馴染みの、ドラッグディールを通じてのお金稼ぎに対する執念と、それに対する後ろめたさというか切迫した焦燥感というか自分でも何言ってるかよくわからんけど、そういう内容です。
自らの差し迫った状況を述べることでドラッグディールという行為を正当化するんだけど、自分の良心も完全には死んでいなくて、ドラッグによって顧客の黒人の人生を狂わせているなんてチラッと頭をよぎるんだけど、いい車が買えたし、妹を学校へ通わせられるし、だからゴメン、もうオレはどっぷりと深入りしすぎたんだ、ゴメン、っていう。

Tylerは本当にやる気満々の人で、売れるためには平気で道化を演じられるし、クレイジーなまでにふざけたりもできる一方で、あくまでも貪欲にヒップホップを追求していて、えぐいストーリーテリングもできるし、あるいはじっくりと内省してみたりと、常にベストを模索し続けていて、本人としては全く嬉しくない褒め言葉だと思いますがホント努力家というか真面目というか向上心があってしっかりした若者ですよね。
リリックやラップのみならず、最新作『Wolf』ではトラックメイキングのほうでも劇的に進歩を見せていたのも凄いです。
随所にNeptunesイズムを発露させていましたが、ほぼ見よう見まねでこのレベルのプロダクションを用意できたのなら、これから先はプロデューサーとしても大きな可能性を提示できそう。もっともっと芸域を広げていけば、そっちの方向でも暴れられそう。
この曲もトラックだけじゃなく、Frank Oceanの声やNasの語りも上手く組み込んでいて、構成としても美しい。
まさに文字通りクリエイター。もうグッジョブが止まりませんね。これからも期待。