FunkだけじゃないUptown

90年代前半、ポスト・ニュージャックスウィング世代の新しいR&Bグループがいくつも誕生していて、それぞれに大きく活躍していたんですけど。
やはりその中でもJodeciという存在は本当に特別で別格だというのは、別にその時代をリアルタイムで体感していたわけでもない僕なんかでも後年になって簡単に感じることができるくらい、当たり前のことである。
タフで逞しく圧倒的に歌える野郎共。ワルでありながら、勝負事には負けない、やるべきところで完璧にやる。皆があこがれリスペクトする、オンリーワンなカリスマであった。
3枚目のThe Show, The After Party, The Hotelこそ何となく散漫でおぼろげな出来でしたが、ファーストのForever My Lady、セカンドのDiary Of A Mad BandはもうR&B史に燦然と輝く大傑作。今なお勉強され、参考にされ、受け継がれ、愛されるアルバムである。
やっぱり、こういう不良が一番カッコいいんだよな。勉強のできる不良、スポーツのできる不良って最高にカッコいいからね。
その後、Hailey兄弟によるK-Ci & JoJoの活動が開始され、Jodeciは長く封印されることとなる。ただ、それ以降のシーンはJodeciの洗礼を受けたシンガーだらけになっちゃうあたり、いかに破格の存在であったかっていう。別に個人名は出しませんよ。なぜなら、全員そうだから。誰かR&Bシンガー、ソロでもグループでも思い浮かべてみ。確実にJodeciに憧れ、影響を受けてますから。
だからもうJodeciチルドレンなんだよね。歌おうが歌おまいが、ブラックコミュニティー全体がJodeciチルドレンっていう。


そんな彼らが2015年、ついに20年ぶりのアルバムをリリースしたのです。
デビューが1991年だから、24年目ですか。
あんなワルだった彼らもたくさんの子供ができ、少しずつ落ち着いていって始まったのが1997年のK-Ci & JoJo。愛は愛でも家族愛であったり慈しみの愛であったりと、方向性はJodeciの頃と違っていた。それはまるで可愛い我が子を温かく見守る優しい父親のよう。
そして今年2015年、子供達も大きくなり独り立ちをし始める時。チルドレンもハタチを超え、親の手を離れることとなり、親父達は再び頑張り始めるわけだね。一発かましてやろうっていう。
The Past, The Present, The Futureは、そういうアルバムである。実に意義深く、重みのある一枚。いろいろ思いを馳せつつ、まぁそうは言うても気軽に聴いてほしいね。


実際の内容の方もちょっと触れましょう。
さすがに20年の時が流れ、彼らもどう構成して行くか考える必要があったはず。
どこまで寄せて行くか。ただ寄せすぎも痛々しくなるかもしれないし、難しい塩梅だったと思うんですが。
ビートは細かく立っていて現代風だ。だけどあの声が重なって響くその時、本当の奇跡が巻き起こる。
やっぱりJodeciのコーラスワークは唯一無二であった。それだけのことなのに、それだけでこんなに幸せになれる。
JoJoの声はちょっとしゃがれた感じがした。でも、このまろやかな味わいはあの頃と地続きで、ただただ気持ち良すぎる。
やっぱり凄い。ごく自然に振る舞うだけで、らしさを表出させることができる。確固たるものがあって、それは時を超えて4人の中に存在していたんだということがわかって、いかに彼らが特別だったかをまたしても思い知ることとなった。
製作陣も奮闘してくれたのかな。崩さず、乱さず、それでいて懐古趣味に終わらないように絶妙に展開してくれたのではないか。DeVante Swingはもちろんのこと、Sanchez Holmesも、愛弟子Timboも良い仕事をした。
Sanchez HolmesってT.I.仕事のあの人と同一人物なのかな。Trap MuzikとかUrban Legendで名前が出てくるあの人。T.I.の全盛期を支えた一人だね。Toompばかり言われるけど、Sanchezさんも大事だったはず。B.o.Bの参加もそこらへんの繋がりか。


こうして違和感無く聴けたのは、時代に脈々とJodeciの魂が残っているからだと思う。子供達のおかげで、Jodeciは今を生きている。
TimbalandJodeciチルドレンであり、実に親孝行な子供達ではないか。
美しいね。最高や。