No.2 Nasの9th Album

『Stillmatic』以降、Nasのラップの軸となっていたのが、<スターラップ>だ。"One Mic"に始まり、"Got Ur Self A...""Made You Look""Get Down""Thief's Theme""Bridging The Gap""Nazareth Savage""Disciple"等と続いたのは、<中身はあんまりないが、ラップのカッコよさで勝負>の曲たち。起死回生の"Ether"によって再びプロップスを得たNasは、それを楽しむようにスターラップを披露しまくっていました。
それが変化したのが、前作の『Hip Hop Is Dead』。かつてないほどメッセージを伝えることに執着したNasはダサカッコイイ楽曲を連発。真摯な想いが溢れた名曲たちに心打たれた人も多いだろう。(よりによってDef Jam移籍後に、売れ線に近いスターラップが無くなったのは意外だよね)
NIKEAir Force Oneのアニバーサリーに際してのキャンペーンソング"Classic"もありました。ここでもNasは切々と'classic'の定義を語ってましたね。憧れのRakimとはAlicia Keys"Streets Of New York"以来2度目の共演となりましたが、センパイがカッコよく名言を連発してる傍ら、言いたいことを言いたいあまり不恰好になっているるNasがいて、いかにもだなぁと思ったり。

さて、<9th album>です。今回はメッセージも込めつつ、いかにスターラップも組み込ませるか、に挑戦しています。
まずは"Hero"でしょう。今年度も最優秀美人歌手賞をあげたくなるくらい可愛すぎるKeri Hilson参加で、Polowによるトラックもドラマに溢れてます。そのうえ、Nasのラップも実にヒロイックで、"Hate Me Now""One Mic"のいいところを集めたような気迫みなぎるフローが純粋にカッコイイぞ。
ピアノのシンプルなループが美しい中、全くお構いなしに突っ走るNasがどこか懐かしい"Queens Get The Money"、風格すら感じられるEric Hudsonが大人の都会的ムーディートラックを用意した"Project Roach"(久しぶりに短い曲をアルバムに入れて流れよくしてるのもいい),西部劇風の渋いトラックの上で淡々とやる姿が名演"Get Down"を思わせる"You Can't Stop Us Now"とかある中、Nasはちょっぴり進化も見せている。キャッチーでソウルフルなループを活かしたフックが絶妙な"Breathe"、サビで一気に盛り上がる構成が巧くハマった"Y'all My Niggas"あたりは昔のNasじゃあ考えられないほどキャッチーで完成度の高いアピール曲ですね(両方をプロデュースしたJ.Myersという人が気になる)。
メッセージ曲では、シャープで緊張感漂うトラックにてFOXをぶっ叩く"Sly Fox"、Toomp節全開の名バラード"N.I.G.G.E.R.(The Master&The Slave)"あたりが光る中、やっぱり"Black President"かなぁ。「Although it seems heaven sent,we ain't ready to have a black president」と嘆く2Pacの声が、この曲の説得力を強めてます。いい歌だね。

ダラダラ紹介しましたが、まさにスキなしの一発でしょ。デカイシングルに燻し銀アルバム曲、ハイライトなアルバム曲が全部揃っていて、ほぼカンペキ。スターラップとメッセージの融合は結構上手く行ったし、前作よりも重厚なところも素晴らしい。

唯一アカンのが、国内盤には歌詞も対訳も付いていないことだ。怠慢ユニバーサルよ、仕事してくれ!!!!!!!