#15 "Next To It" Lupe Fiasco featuring Ty Dolla $ign

人の性質とか性格とか、そう変わるものではない。そして、多少文句を言いたくなることもあるけど、人の内面に対してあんまり干渉すべきではない。
Lupe Fiasco、もはやただの中二病おじさんである。
デビューが2006年。その前にはKanye WestのTouch The Skyでの鮮やかなパフォーマンスがあって、大いに期待されていました。アルバムデビューを控え、あの時はアルバムのリークがあって、いくらかのすったもんだがありましたが、まぁ今となっちゃあ、あの頃からいろいろと脇の甘い人間だったんだなと納得しちゃいます。
ファーストは傑作。フロウ、リリック、サウンド、プロダクションにプロモーション。既に完成されていたパッケージにして、次世代を担えるホープ。これまた素晴らしいMCが出てきたなと興奮したものです。
セカンドもかなりの出来。特に前半の怒涛の名曲群にはド肝を抜かれました。色鮮やかにフレッシュに、こんなにもアイディアは尽きないものなのかと感動しきりでしたね。アルバム後半はよくわからんラノベ調の展開が待っていましたが、別に構いやしない。リリックの着地点は不明でしたが、音楽としてそれなりに価値があった。もしかしたら、当時不気味に披露されていたTrapped In The Closetの流れを意識したりしてたのかも?同じシカゴ民として。わからんけど。
そういやあの頃も引退がどうこうとか言ってて、まぁ既に面倒臭いのも始まってたんだったね。Dumb It Downもヒップホップ的によくある手法とは言え、今振り返れば上手ではないなと感じます。
その後は難しい時が続くことに。オバマフィーバーの際の空気読めないステートメントとかもあったし、シングルヒットがないとアルバムは出せないとかいうレーベルの主張に反発しての署名運動、そこから漕ぎ着けたサードアルバムの何とも言えずぬるい出来、と思いきや意外とThe Show Goes Onがまぁまぁスマッシュヒット、フォースは原点回帰風に見えてどっちつかずの半端な内容。
8年目。長く続いているんだから、悪くはない。それなりに有名だし、存在感もある。
しかし、あの頃抱いていた期待通りに進んできたのかというと、全然そうでもない。
もっとクリエイティブであり続けると思っていた。もっと聡明で視野が広いと思っていた。
でも実際は、Commonみたいなラッパーでした。どこにでもいる、普通に生きるお兄さん。
真面目だけど、もちろん性欲もあるし、物欲もある。そりゃそうだ。
リア充なのがCommonとの違い。
まぁね、しょうがないよな。顔とか性格が良ければ、素直にありのままのラップができる。Big Seanみたいにね。彼みたいに皆から好かれて認められて、っていう世渡りになる。
真面目は真面目でも、方向性がね。頑固方面に真面目が行くと、やっぱり視野が狭くなって。


とりあえず、今回のNext To Itに触れましょう。
JuvenileのHaみたいな、とかいう例えは古すぎるし微妙に的を射ていない感じがする。
漫然と繰り返しているようで、実は前後のラインに繋がりがあるし、論理展開としては間違っていないし、筋が通っていて、説得力がある。
リリックのコンテンツは現代版枕草子的なところもありつつ、もっと深層心理をえぐりそうな気配もある。考え甲斐があるし、まだまだLupeの頭は錆びついていない。
たしかに男を突き動かすのは女性の存在よ。富も名誉も、女性を得るため。
まぁね。


リリックに縛りがあるせいでラップとしては単調に陥るところなんですが、間が持たない感じも特にない。
それはTy Dolla $ignによるトラックとフックによるところが大きいでしょうね。
シンプルですけど、少ない音数でたっぷりとブルージーな感触が出た好トラック。
一番の揺るぎないメッセージを哀愁こめて歌うフック。
特にフックのコーラスワークとか気が利いている。かゆいところに手が届き、気持ちよく聴ける。
この人はちょっと前までラッパーだったと思いますが、こういう仕事を見るに、このシンガーソングライター路線の方がワンチャンあるよな。
Pharrell監修のT.I.Paperworkもこの手のブルージーさが溢れていたし、次はここらへんの音が見出されていく感じなのかな。 UGKとかScarfaceあたりのサウンドプロダクション。
ってなると、今は西と南で分け合っている状況から、また南へと傾いていくような、そういう寄り戻しもあるかもしれん。
わからんけど。


さてさて。Lupeね。Next To It。
昔のKick, Push(懐っ!!!)とかSuperstar、Paris Tokyoあたりと比べたら地味ですよ。小さいし。でもクオリティはある。だから、ついつい信じてみたくもなる。
次なるアルバムタイトルはTetsuo & Youth。
てつお?なんか本人は認めていないっぽいけど、とりあえずAKIRA島鉄雄でしょうみたいな噂。
AKIRAね、昔ぼくも物心つく前にファミコンのゲームでAKIRAやってましたよ。全然理解できてなくて、まったく先に進めなかったですけど。
今回Lupeのアルバムタイトル発表にあたり、はじめて漫画AKIRAを読ませていただきましたが。
そうだね、よくわからんけど、めっちゃ焦燥感があるし、あと、内容的にはよくあるヒロインモノっていう印象でした。
僕はなんとなくFinal Fantasy Tacticsを思い出した。順番は逆ですが。
男を突き動かすのは女性。いつだってそう。Next To Itのテーマと同じ。
でもNext To Itは収録されないらしいなTetsuo & Youth。なんやねん。
相変わらず空気読めてない、この感じ。
上手くいかないね。困ったものです。