if you wanna eat

Jadakissという方も本当に複雑で不遇なラッパーですよね。
ご存知The L.O.X.としてBad Boy Recordsからのデビュー、しかしBad BoyというかPuff Daddyとの方向性の違いから離脱、その後DMX率いるRuff Rydersからの再出発という形、順調にソロデビューまでこぎ着けました。
L.O.X.の『We Are The Streets』こそSwizz印満載のいかにもRuff Rydersな出来上がりとなっているんですけど、ソロデビュー以降は意外なまでに売れ線に近いプロダクションで構成されたアルバムばかりなのが事実である。RRでの2作も、Rocafella入団後の3rdも。ああいうキャラと見た目でありながら。
そして問題なのが、売れ線なのはまぁ許すにしても、微妙に時流からは遅れたビートセレクションだったりすることである。なんかトラックが古いんですよ。なんか4、5年前に流行ったようなビートばっかり。それ今やるの?みたいな。
まぁそこをなんとか力技で名作へと近づけて行くKissのラッパーとしての技量ですよね。クオリティは素晴らしいがなんとも古臭いトラック、それをテクニックとデリバリーで強引に押し上げて行く。そういうのは正直嫌いじゃないけど。
何なんでしょうね。もっとニューヨーク全開のプロダクションを組んでみてもいいと個人的に思うんです。Jay-Zの"Where I'm From"とかJa Ruleの"New York"とか、Black Robの"I Love You Baby"とか。例に挙げた楽曲もまたやたら古いね。ニューヨークっぽい曲って最近シーンにないんか。


新作『Top 5 Dead or Alive』。
もう5年くらいずっと言ってましたよね、次のアルバムはこういうタイトルって。遅すぎる。
もしかしたらレコーディング期間が長過ぎるゆえにああいうやや遅れたプロダクションになっているのか。
だとしたらレーベルが悪いんか。A&R?誰の責任なんだろう。
例によって新作まだ半分くらいしか聴けてませんが、そんなに悪くない。
とりあえずラップはいい。確かな技巧があるし、聴かせる力があるから退屈しない。
トラックはね、まぁ驚くよね。2015年にもなってこんな感じかっていう。
半分聴いた上で大多数を占めているのが、まさかのトラップビート。まじか。6年ぶりのソロアルバムがこれか。
Trapというヒップホップジャンルで考えた場合、なかなか凝ったトラックなのよ。ドラマもあるしダイナミックだし。いいビートなんですけど、今やるかっていう。
Shondrae aka Bangladeshのビートも意外なまでに明快なトラップで残念。もっとエキセントリックなモノを期待したんですが、無難だった。その分Weezyがかなりフリーキーに振り切れてて上手くバランスをとっていたんだけど、まぁぶっちゃけLil Wayneがゲストっていうのもなんだか5年前ぐらいの感覚よね。
Akonのフックとかここ数年聴いてなかったですけど、変わらない。人はそう簡単に変わりやしない。いつもおなじみの代わり映えの無い迫真サバイバル路線。最初の"Soul Survivor"は初めてだったから鮮烈だったよアレはすごい。でもそこから先ずっと金太郎飴。どこを切っても同じ。変わらないことも美の形のひとつっていうことか。安心する落ち着く要因とも言えるんか。ようわからんけど。
そんな中、やはり相棒Styles Pとの楽曲はすごいね。"Synergy"。やっぱりこの二人の掛け合いはスペシャルなモノが産まれる。間違いない。そしてproduced by Just Blaze。イントロでJust Blaaaaazeみたいなヤツが聴こえて、ああこれはまたいつもの勇壮ヒーローバンガーなんだろうなと身構えていたら、やたらソウルフルで美しいループが用意されていた。最高やん。これは良きJadakissだ。こういうのみんな好きだから。歌詞中も似たフレーズが飛び出してきたりと、これはクラシック"We Gonna Make It"を意識した一発。トラックもラップも。そう言えばAlchemist曲今回なかったじゃねぇか。おいどういうことやねん。
まぁとりあえずJust Blaze良い仕事。すごいよ。こういう引き出しも楽勝であるんだよな。"Touch The Sky"みたいな。ってかコレもまた古い引用だなオイ。


Kissも"You Don't Eat"にて、「"Ether"の最後のヴァースでオレの名前聞いただろ」というラインを披露しています。ヒップホップ史に残る伝説のディスチューン、その一番最後を飾るフレーズが意味するところは結局誰にもわからないし、Kiss自身もそのラインについてNasに特に具体的に話したりはしてないらしいんですが、あれはポジティブな意味でのネームドロッピングであって、Kissはあれをすごく誇りに思っているみたいですね。むしろちゃんと評価してくれよっていうぐらいの気持ちらしいですが。
なんつーか、結局Nasかよっていう。もう全然まったく世代交代とかないんだな。
Etherは衝撃的で伝説の一発なんですけど、もうあれは2001年ですから。未だにこの話が出てくるのは、どうなんですかね。それだけ伝説であるというのはけっこうなことですけど、何か更新するような流れはないんか。
ヒップホップは歩み続けているんでしょうかね。正しく無くてもいいけど、立ち止まってほしくは無い。
進め。







昔の曲って最高やね。