"千%" Kick The Can Crew


J-Popならではの歌詞世界として、大人になって幼少期を振り返り、あの頃の気持ちをもう一度っていうものがある。パッと思いつくのはMr.Childrenの"innocent world"とかGLAYの"グロリアス"とか。
その逆のパターンもあるわね。子供が早く大人になりたいっていうパターン。尾崎豊とかがわかりやすい例か。


Kick The Can Crewの歌詞というのは、周りがどんどん大人になって行く中で、まだまだ子供でいさせてくれよというモノである。
モラトリアムミュージック。
"アンバランス"とか"sayonara, sayonara"とか"イツナロウバ"とかは顕著だし、そもそも缶蹴りという行為自体がモラトリアムの象徴というか、遊びの中で現実を忘れ夢中になるっていう。
僕は正直、キックよりもRIP SLYMEとかスケボーキングの方が好きだったね。それは単純にキャラクターとか、あるいはトラックの好みによるものと思ってたけど。
もしかしたら当時高校生の自分には、あのメッセージが強烈すぎたのかもしれない。痛いところ突かれすぎてて、直視できなかったからかもしれない。
あのときMステで"sayonara, sayonara"をやってる3人を見たよ。クレちゃんのヴァースを聴いて鳥肌が立ったのは鮮明に覚えている。胸がすごくざわざわして、あんなことはあんまりないから。


時がけっこう流れ、Kick The Can Crew再結成。
なぜか上手くなってる雄志くん。依然凝りまくるリッくん。KREVA製のトラックも過去最高にエモーショナル。
細かいサイドキックも健在。フックのユニゾンの勢いも変わらず続いていく。
泣ける。泣いても何もおかしくない。
歳はとったよ。2017年。
でもやっぱり思った。なんだかんだ言って、この人たちは今でもやっぱりモラトリアムの音楽なんだなと。
彼らの音楽を聴いてる間だけは、現実世界から飛んで行ける。
高校時代の、楽観的で躍動的な感情が甦ってくるかのよう。
あの頃の一生懸命な瑞々しさを、ちょっとだけ思い出させてくれる。


幸せになろう。