中日vs巨人 3回戦 観戦記 (長い)

32歳にもなって結構本気なダッシュをする。時刻は午後5時58分頃。なかなかに際どい状況であった。しかし強い思いが届いたのか、チケットが指し示す座席へとたどり着いたのち、見下ろした視線の先には、なんとも言えない緊張感とざわつきが包むナゴヤドームのマウンド。入念に準備を進める松坂大輔の姿を捉えることができた。

よかった。なんとか間に合った。記念すべき再スタートの一球目を見逃すことなく、この目に焼き付けることができる。よかった。
そう。日本プロ野球ファンが注目し、待ち望んでいた試合を見に行ったのである。



それは前日。上司と職場で「そういや明日松坂ですよね」的な話になったところ、「じゃあ見に行っちゃう?」的なノリになり、急遽チケットを探したところギリギリ内野Sをゲットすることに成功し、その日を迎えることとなった。
私は東京ヤクルトスワローズのファンでありますが、それと同時に90年代後半から00年代初頭にかけてのプロ野球ファンでありますから、近くで歴史的な試合をやっていると言われたらそりゃ見に行くでしょっていう。
まぁそんな導入は置いておいて。


当然注目は松坂大輔であり、上原浩治であり、あるいは岡本和真や鈴木博志といった今が旬の若手たちが挙がるんですけど、そんな話をしてもつまらないので、僕なりの視点で喋っていきます。



ホームの中日は開幕からほぼ不動のラインナップ。ポイントとなるのは567番で、福田永将・高橋周平・平田良介という並びは下位打線でありながら強力に見えてきます。
中日に限らず巨人もヤクルトもDeNAからも感じられるのが、こう如何にして下位打線を厚く盛って行くかというところである。4番までは球団ごとにある程度の鉄板ネタがあるわけで、そこから先の5番以降の打線を途切れのない最善の構成となるようどのように練って行くかは各球団の開幕してからの至急の課題である。
スタメン野手8人の名前はなかなかの見栄えがあり、後は適材適所を意識した打線を導き出さなくてはならない。
個人の話も少し。
まず福田は昨シーズンついにブレイク。森野将彦の成長曲線aka森野曲線に乗ったとファンも喜んだ存在である。今年は打線の核としての自覚に加え、最低20本は目指したいところ。
周平もいよいよ24歳になり、流石に言い訳のしようがなくなってきた。故障なくスタメン定着するのは最低限のラインとして、まずは二桁ホームランをノルマとしたい。
同じく故障が絶えない平田であるが、まだまだ老け込むような年齢ではない。持ち前のトータルバランスと勝負強さでもって、80打点を記録できると打線の迫力が増すだろう。彼本来のクラッチ力に大いに期待したい。


巨人の注目はやはり外野の構成ですね。
先日の柳のデッドボールにより陽岱鋼をしばらく失うこととなった由伸巨人は、まず昨日、中井大介を一番ライトへ起用し、長野久義をセンターへと配したオーダーを組んでいる。由伸お気に入り枠として度々批判に晒される中井ではあるが、長嶋茂雄も認めたシュアなバッティングに間違いはなく、陽岱鋼の比較で考えた場合、パワーでは及ばないものの、アベレージではかえって上回るぐらいの貢献も考えられる。ただその一方でレフトのゲレーロを含めた外野守備は恐ろしくファイアーな並びとなってしまい、広いナゴヤドームでは致命的になるかもしれない。
結果として外野守備で大きなボロが出ることはなかったが、効果が期待された打線も淡白なまま、向上は見られなかったのである。
すると今日の並びはこうなりました。

結果が出てない長野と中井に変わり、1番センター立岡宗一郎7番ライト亀井義行という布陣。中井をさらにパワーレスにした代わりに左打ちとスピードをつけたのが立岡で、そのスピードの分ギリギリセンターもこなせる (ポカもある)というのが彼の特徴ですね。トップバッターにおくことで吉川尚輝とともに足を活かした攻撃も展開できるかもしれない。亀井はご存知あの世界の亀井さんでございます。いい加減ベテランの領域にどっぷり浸かる年齢ではあるんですが、依然衰えのないスマートで洗練された守備力と走塁勘、案外計算はできないけど不思議な魅力に富んだバッティングで巨人にたくさんのプラスアルファをもたらしてくれるだろう。亀井なら立岡の怪しい守備もカバーしてくれるかもしれないし。
さらに本日は捕手に大城卓三を起用。小林誠司に休養を与えるだけでなく、ルーキーながら実に完成度の高い打撃で下位から攻撃の形を作って行くことが期待できる。場数は全然踏んでいないので勝負所でのリードに未知数なところはあるが、壁としての性能も穴となるほどでもなく、破綻することはないだろう。立岡亀井の打撃の物足りなさを補う上でも大城の打撃に期待。
これからローテの中の2日は大城デーがあると考えられるね。田口麗斗も大竹寛も内心は誠司と組みたいのかもしれないが、温厚な彼らはルーキーキャッチャーの成長にも快く手を貸してくれるでしょう。
そんなところかな。




さぁ試合に入っていきましょう。
慎重に立ち上がる大輔ですが、立岡の内野安打からリズムを乱されて行く。単独スチールも決まり、そこからゲレーロの先制タイムリーへと繋がって行く。ケイシー・マギーと岡本を連続三振に仕留めてなんとか最小失点で切り抜けたわけですが、たった一人の立岡にやられてしまって、ここは由伸の起用が早くも結果を出したというところか。
しかし中日も反撃が早い。さっきの巨人と同じような攻撃からアルモンテの同点タイムリーが飛び出し、なおも1死2塁。ここでビシエドの投ゴロでセカンドランナーが刺されるあたり、流れを完全に掴みきれておらず、勿体無さが詰まった。
注目の大城の第一打席。綺麗に流して三遊間を破るヒット。現段階で既にこんな素晴らしいバッティングを持っているんだから、贅沢な悩みである。そこからのチャンスは得点ならず。

2回裏。この日最大の大歓声が巻き起こったのが、松坂大輔の第一打席である。ご存知あの春夏連覇を成し遂げた98年横浜高校のエース兼4番打者であり、ワールドシリーズでもタイムリーヒットを打っている平成の怪物は、もういうまでもなく野球の申し子であり、天才なのである。誰しもが期待を胸に抱くその打席。大竹大城バッテリーも実に冷静で、慎重すぎるくらい丁寧にカウントを進めていき、最終的にはショートゴロという結果に終わりました。
粘った巨人の3回表の反撃はラッキーなヒットにナイスな走塁、相手のエラーなども重なって2点の勝ち越しに成功する。既報の通り岡本和真は中村剛也とのトレーニングにおいてヒントを得たようですが、岡本とおかわり君の地味な共通点として、意外と両者足が速いというのがあります。打者のタイプとして遅そうですが、案外いける。岡本に至っては1年目からスチールの感性も優れているところを見せていて、その気になればトリプルスリーも狙えるかもしれない存在なのである。まぁ彼には率よりも純粋に30発40発打ってほしいけどね。

4回表にも大城のヒットからチャンスメイク。今度のヒットは引っ張った痛烈な打球で、大袈裟に言ってここまで完成度を感じさせる巨人のルーキーバッターってほんと由伸以来じゃないかって気すらする。慎之助や長野なんてもっと波があったし、仁志敏久清水隆行とか二岡智宏ももうちょっと粗を残していたからね。誠司との争いなのか、あるいは併用したくなってコンバートもありうるのか、由伸は贅沢に悩んだ末に結論を出さなくてはいけない。ちなみに無得点。
しのいだ中日の4回裏はビシエドのヒットから始まって動きそうだったが、周平のいいあたりを滑りながら掴み素早く二塁で封殺という形で難なく捌く坂本勇人の鬼の守備。勇人はそれこそデイビット・ベッカム内田篤人の系譜、つまりイケメンがゆえに過小評価される類のアスリートである。優男ゆえ頼りなげに映ってしまい、オールドファンからは不当に叩かれたりするものの、実際は熱くチームのために己を燃やしながら、一途にストイックに勝利のみ求めて戦い続ける、そんな選手たちなのである。坂本には元気で健康に過ごしてもらって、某在日の3085本を上回ってもらいたい。
その後5回裏。先頭の松坂のところで代打が告げられここで降板。5回3失点 (自責は2)は悪くないどころか、十分に合格点だろう。奪三振も5取れてるし、そこそこキレもあったに違いない。ローテ6番手として考えればこの先もチャンスあるだろうし、シーズンが深まればもう少しイニングを食えるようになってくるはず。今後に期待大だね。
6回表の中日は伊藤準規がマウンドへ。このイケメンもとりあえずって感じで中継ぎをやってますが、できるんだから先発やりゃいいのにね。すると巨人もここまで1失点の好投を続けていた大竹にさっさと代打を出すっていう。球数もまだ80球すぎぐらいだったはずで、ちょっと由伸早まったかなぁなんて考えちゃいますが。
裏はまず澤村拓一から。確かに調子がいいし信頼しているんでしょうけど、じゃあ7回はどうすんのよと。すると1アウトから一気の3連打で1点差まで詰め寄り、そこから平田にもヒットが出たがセカンドランナーが帰って来れず自重。それでも依然1アウト満塁の絶好機が続きますが、バッターの大野奨太が注文通りの併殺打を披露してしまい、同点ならず。これは痛い。
7回裏、球数がかさんだ澤村は当然交代。いやむしろあっさり抑えた日には回跨ぎすらありえたのかもしれない。由伸にとっては、そんな病み上がりの人に遠慮などなさそうだしね。交代で出てきたのはスコット・マシソン。オープン戦で絶不調と報じられていたが、まぁこうしてアドレナリンが溢れる本番には例年通り相手を圧倒するような投球を披露。中日ラッキー7の攻撃をいとも簡単にサクッと片付けちゃうのである。
まぁこの人は健康でさえあれば全然問題ないからね。しょうがないね。

対抗するように8回表、中日は岩瀬仁紀を投入。打順も下位ではあったが、全く寄せ付けず。最後はフロントドアのスライダーが完璧に決まり、格の違いを見せつける形に。

8回裏、巨人も満を持して上原浩治をマウンドに。巨人ファンのみならず中日ファンからも歓声が上がるのは、やはり往年のスタープレイヤーである証ですよね。っていうか松坂・上原・岩瀬が投げるとか、いつの話だよっていう。何年だよコレ。
先頭のアルモンテにはフルカウントまで粘られるが最後はストレートで空振り三振。続くビシエドも打ち取ったものの、強烈な打球を途中出場の中井大介が止められず記録はエラー。ますます中井へのヘイトが溜まりそうな一方、上原にとっては復帰後初のランナーを背負った投球に。果たしてどうなる。打順も福田、周平と続く強力なところでピンチだったが、いずれもやや捉えられた当たりではあったものの、なんとか野手の正面に飛び、無事にピンチを切り抜けた形となった。
上原自身まだ細かく調整中な感じではある。コンディションもだけど、マウンドへの対応、さらには誠司ら捕手陣との連携。出来上がってくればもう少し球速が出るだろうし、そうなれば当然スプリットも威力が増すはず。その頃には多少相手も慣れてくるだろうが、そこを上回るだけのクオリティを発揮できれば変わらず抑えられるだろうし、発揮できると思う。しかしながらこの状態でありながらも未だにヒットすら打たせていない上原はやっぱりとんでもない人である。やっぱりダントツの超一流だし、ダントツのスーパースターだ。カッコよかった。
9回表、ここで中日は前日に素晴らしいピッチングを披露したドラ1ルーキーの鈴木博志をマウンドへ。いやぁありがたいね、見たかった選手みんな見れるやんけ。生で見ると、スピード的にはマシソンや澤村ほどではないにしろ、そのかわり重そう。球質が良さそうだね。いかにも体重の乗った重そうなストレートで、こりゃなかなか前に飛ばないんじゃないか。結果今日は奪三振こそなかったものの、上位打線を全く寄せ付けず軽く三凡を刻んだ。すごいね。これなら勝ちパターンで普通に使えます。大事に使って行こう。
最後9回裏はカミネロの登場。何気に1点差なので、案外わかりませんよ。実際先頭の平田がセンター前ヒットで出塁、続く大野奨太もなんとか送って1死2塁の同点チャンス。ここで打順はピッチャーのところ、代打は誰かというと、松井佑介。うーん... なんかなぁ。5回裏の松坂への代打のところで藤井淳志を使っちゃってるんだよな。巨人もここで藤井が来た方が嫌だったと思うんだけど。正直松井佑介がどんな選手でどれだけ期待されてるか知らないんだけど、どうせならまだ残ってた堂上直倫を起用した方がまだ観客的には納得したというか満足しただろうなっていう気はするけど、そこは森繁和監督の判断なのでね。結局カミネロの160キロに迫るストレートで空振り三振。それでも依然続く同点のチャンス、バッターは大島洋平で思いっきりデッドボール。気のせいかもしれませんが今シーズンなんとなくデッドボール多くね?こんなもんだっけか。サヨナラのランナーも出て、ここで打席には京田陽太。まずい守備で3回表の2失点に思いっきり絡んでいるだけになんとか挽回したいところだったが、結果はピッチャーゴロで試合終了。巨人が1点差ゲームをしっかり逃げ切る形となった。



中日で目立ったのは高橋周平。右に左に上手く打てていたし、怪我さえなければある程度の数字も期待できるだろう。打線全体もヒットは出ているので、上手く並びを見つけることができたら得点力ももう少し上積みが期待できるかもしれない。
その一方で大島と京田に元気がないのが厳しいところ。1番2番の打率がほぼ2割では流石に攻撃が機能しない。大島はそのうち戻してくるでしょうが、京田は普通に2年目のジンクスっていう可能性もあって、選手も監督も我慢を要することとなるかもしれないね。
松坂を含めた投手陣も安定感を見せた。中でもやはり鈴木博志の投球内容が素晴らしかったね。前評判通りの直球で、このまま続けていけばルーキーでいきなりオールスターに選ばれるかもしれない。

予告先発が発表されてて、阪神藤浪晋太郎、中日が小笠原慎之介ということで、甲子園優勝投手対決になりました。二人とも好きな選手ですから、ナイスな投手戦に期待したいところ。これで舞台が甲子園なら両者なんか思い出すこともあるかもしれませんが、残念ながら京セラドームですね。しゃーない。また今度。



巨人は選手起用がハマった形となった。光ったのは立岡と大城。
立岡は打撃に内容もあったし盗塁も決めていて、1番打者として完璧な立ち回りでした。左ピッチャーへの対応力は今後見極めていかなくてはいけないでしょうが、とりあえず陽岱鋼が帰ってくるまでは基本形として立岡をスターターで起用していくのが無難なラインかもしれない。2015年ほどは望まないにしても、2割7分〜8分を期待したいところ。
大城も見事なバッティング。ルーキーだしその上キャッチャーなので本当に大変だと思うんですけど、そんな中わりと涼しげに苦もなく快音を残すあたり、尋常じゃないセンスが垣間見える。大きいのも打てるし、他の球団なら楽勝でスタメンマスクを不動のものにすると思うんだけど、誠司のディフェンス力は大事なんだよなぁ。巨人ファンも真っ二つに分かれてるし、由伸も悩むでしょうね。大城を本物と認めるのであれば、最終形として先発菅野智之の時以外は全部大城でスタート、試合の後半でリリーフキャッチャーに誠司を起用するべきやね。まぁ交流戦前までは見極めの時期だと思うので、このまま週4誠司、週2大城でいいと思う。見極めというのは大城だけじゃなくて、誠司のバッティングもです。一応打率は5割。もしかしたら伸びてるのかもしれない。いやぁこんなんだったら岸田行倫獲る必要あったんかなぁ。2軍には宇佐見真吾もいるわけで、もうさすがに巨人は慎之助の亡霊は払いのけられそうか。
先発の大竹は地味によかったね。元々中日への相性がよかったみたいだけど、淡々と堅実にアウトを重ねていく安定感はさすがベテランといったところ。球威は感じなかったが、培ったテクニックでもってローテを守っていけば8勝ぐらいは残せるんじゃないか。
現在のローテは菅野-田口-野上-山口俊-吉川光夫-大竹。うーん、まぁ実績は全然あるんだけど、優勝争いをするには心許ないところだろうね。マイコラスの穴は当然大きいし、畠世周もいつ帰ってくるのかわからんし、あと他に先発として期待できそうなのは大江、中川、高田ぐらいなのかなぁ。いずれもプロスペクトとして大事に起用すべきで、しばらくはおっさんたちが粘っていくべきでしょう。
しかし由伸は大竹を降ろすの早すぎでしょ。まだ全然いけたと思うんだけど。今シーズンは頼れるリリーフを二人も得たからって、あんまり調子に乗って連発すると絶対よくない。澤村は病み上がりだし、上原も43歳だからね。
それにピッチャーを3人4人と起用するということは、それだけくじを引くということ、つまり誰かしらその日調子が悪いやつが出て来てもおかしくないのである。全員が全員いつも好調とは限らない。不運もあったが今日は澤村が低調で危なかったわけだし。
継投は斎藤雅樹が担当しているのかもしれないが、長い目で見てブルペンを運用していって欲しいね。
実際ブルペンは近年でもトップクラスに充実しているのは間違いないので、余裕を持つべき。連投は2まで、っていうルールにしても何とかなりそうなぐらい面子は揃ってると思うんですけどね。
こんなところでしょうか。
あとどうでもいい話として、長野が終盤に守備固めで出てきて、それで隣に座ってた先輩が「長野って守備良いの?」って質問が。「打の野本、守の長野」っていう日本プロ野球史に燦然と輝く大嘘を思い出しました。




長くなりましたが、以上です。
ちなみに優勝予想。セリーグ東京ヤクルトスワローズが優勝と予想を書いておきます。はい。