No.15 『LAX』The Game

僕の中で『The Documentary』は2005年の第2位、『Doctor's Advocate』も2006年の第2位に輝き、駄作知らずの貫禄があったThe Game(彼の良さは10月30日の文章でも少し触れましたのでよろしければ)。

ただ、今回の『LAX』はどうでしょう。なんか、終始地味なんだよね..
Ice Cube参加で燃えるはずの"State Of Emergency"にしても、Raekwon参加で期待できた"Bulletproof Diaries"にしても、Ludacris参加の"Ya Heard"にしても、爆発しそうでイマイチ盛り上がりに欠く。MTVで何度も観てるうちにまあまあ好きになった"My Life"にしてもシングルにしては地味すぎる..
それはシンガーたちを起用した曲も一緒。起伏の無いトラックが(ハズレ知らずの)Chrisette Micheleを完全に殺してしまった"Let Us Live"はもちろん、The Gameがモノマネを披露する珍曲"Can't Say Goodbye"にしてもLaToiya Williamsを特に活かしてるとは思えん。
"Game's Pain"は悪くなかったが、The Gameが感謝したいヤツが多すぎたためか、ネームドロッピングを無理矢理詰め込みすぎてキチキチになってしまった(Remixはよかったかな)。
DJ ToompやTravis Barkerが参加してるアルバムと言えばT.I.『King』がありますが、"House Of Pain""What You Know"と比べてやけに薄っぺらいし、"Dope Boys"は悪くないけど"You Know Who"と同じくアルバム曲レベルだと思う。いや、逆に言えば『King』におけるアルバム曲レベルの曲を『LAX』はリードシングルとしてカットしなきゃいけないっていうことでもあり、苦しい台所事情が見えて寂しい。
ジャケもねぇ..いつものタイヤジャケはどうした!二人の息子ジャケも、ふかしジャケも、苦悩ジャケも悪かないけど、せっかくファーストセカンドで統一してたんだから踏襲、もとい、ふしゅうすりゃ良かったのに。ケツメイシがやってるケツノポリスシリーズでの沖縄ジャケみたいにさ。あれは手抜きすぎだけど、味わい深いじゃんね。
って、ちよっとけなしすぎたかな。褒めモードに入りましょう。
エロ曲"Touchdown"は気の利いたリリックが光るね。Touchdownは空港に到着するっていうこと(アルバムタイトルのLAXはロサンゼルス空港のこと)だけど、エロタッチもダブルミーニングさせてると思う。さらにThe Gameは曲中に「キミはEli Manningのパスのように綺麗だよ」というラインを残してますが、イーライ・マニングとは言うまでもなくはアメリカンフットボールの選手で、ポジションはQB(=クォーターバック。クイーンズブリッジではないよ)で、味方にパス出して'タッチダウン'を奪う役割を担う人です。巧いでしょ。
"Angel"はコンセプト、トラック、フックの歌が最高。自分がhiphop愛を歌い、そして敢えてCommonにドラッグ愛を歌わせるのはナイスです。
"Cali Sunshine"はNottzとBilalが作った雰囲気、なんかCaliの暑さでめまいがしそうな、そんな感じの演出が見事。
そして、一番良かったのは、このアルバムのイントロDMXは今やもうアメリカの江頭で、逮捕されることが仕事のような、そういう残念な人になってしまいましたが、あの声、あの叫び、あの祈りにはいつも鳥肌が立ちます。あんなスピリチュアルでエモーショナルなラッパーはいません。お願いだからフツーに仕事してください。HipHop界にはあなたが必要です。