No.13 『Exit 13』LL Cool J

別に13をそろえたわけちゃうからね。

なんか、最近そのキャラすら面倒臭く感じられるLL Cool J。依然現役であるがマンネリは否めず、「ハイハイ、またアンタね」と受け流されそう。
前作の内容がまた極めてド王道のLL節だったら、マズかった。よく言えばオーセンティック、悪く言えば代わり映えのないベタベタな内容で、そんなに惹かれなかったんです。

で、今作はどうか。
相変わらず先行カットがいいね。"Paradise"から"Headsprung"から"Control Myself"と、時代を見据えたナイスカットが続いてますが、今回も例外ではなく、"Baby"です。初めてVMCで聴いたときは地味だなぁ思ったんですが、そんなことないね。The-Dreamがいつものやり方でフックを歌うんだけど、彼の中性的な声の魅力が実にハマってるし、LLも相変わらずのレディキラーっぷり。なのにトラックがトランシーな分、浮わついた印象を与えない。その上もちろんトレンディなわけで、なんて手堅いんだ!
さらには、アルバム通しての雰囲気がですね今までと一変してて、Ladies Loveな曲は先述の"Baby"ぐらい("I Fall In Love""American Girl"もあるがビートは甘くないし、Lil'Moの力強い歌声が素敵な女性応援歌"Cry"にしても甘いというよりは感動的です)。いくつかProdigy『Return Of The Mac』的なNYソウル曲も交えつつ、中心となるのはhard trapなんです。
前作で言えばJuelz Santanaとの"It's LL&Santana"という現行trap beatを乗りこなした曲が一つだけKYに入ってましたが、今作はその路線をメインに据えた感じか。
荘厳な"It's Time For War"、Bink的な勇者曲"Old School New School"、倍速乗せの"Get Over Here"I'm A HustlaI Get Moneyのドラムに乗った"You Better Watch Me"Clipse"Ride Around Shinin'"っぽい怪しいループの"This Is Ring Tone M"等々、いきなりの尖りっぷりにビックリ!
ビックリで言えば、Wyclefとのまさかのジョイントもあるね。まあ、フツーな曲ですが。
ソウルフル系も良くて、50 Centとのジャジー"Feel My Heart Beat"とか、めっちゃデカイスケールの"Ur Only A Customer""We Rollin'"とか、これも充実。

ってな具合に、悪い印象は受けなかったな。もちろんHeadsprung級の曲はなかったんですが、時代の流れを捉えたフレッシュな一枚と言えそうです。懐の深さに加え、確実な対応力を見せたLLの基礎能力の高さが光っていて、まだまだオッサンのマイク馬鹿一代紀は続いていきそうな気がします。

しかし、チャートでJessica Simpsonに負けたのは相当ショックだったろうなぁ..