No.3 『The Last Kiss』Jadakiss

倉木麻衣"Break The Tone"の歌詞中にも名前が出てくるJadakiss。いよいよ日本でも認められる存在になったということ?
それはわからんが、とにもかくにもKissが帰ってきたのだ。
5年ぶりというブランクがもたらしたものは、恵まれた環境と、わりと自由が与えられた時代。つまり、好きなことを貫くことが許されたのだ。
結果的に、彼は魅せたね。カッコよかったよ。勇者みたいだ。
いかにもRocafellaなトラックの"Can't Stop Me"にて、ノリや勢いで誤魔化さず、丁寧にライムとフローだけで勝負する姿に感動してしまう。何だか泣けてくるぐらいのカムバック作になりました……

……ここからは冷静になって、分析してみます。
"By My Side"が先行カットでした。前作には"By Your Side"があったけど、寂しがり屋か?まぁええけど、ベースラインが響くヴァース部からフックのきらびやかな感じがどこかBad Boy風情があるような気がして興味深いよね。アルバム中にもたびたびBad BoyやPuffへの言及があるんだけど、いろいろ思い出したんだろうな。
本人の趣味なのか、アルバムになるとトレンディで幅広いビートセレクションになるのが恒例。Remixがたまらなかった"Who's Real"がT.I."Swing Ya Rag"っぽかったり、血が湧き立つ"Something Else"が初期Lil Jonっぽかったり、南を少しかじってみてます。結果はビミョーですね。後者はJeezyとのコラボになりアウェイなトラックで惨敗も予想された中、ギリギリ踏みとどまったかな。Jeezyには負けなかったけど、フックを叫ぶFiendに喰われた?
ホラーものが2つあったけど、"Come And Get Me"も"Death Wish"もわりと南っぽいか。
他の特徴としては、シンガー起用率が上がったことか。これはRocafella入りに起因しそう。先述の勇壮な"Can't Stop Me"、ディープなレミニス曲"Things I've Been Through"、要注目のAvery Stormと絡むアッパー"I Tried"、Jazmineが牧歌的に銃を歌うことで強烈なインパクトを残す"Smoking Gun"あたりはいかにもRocな聴き心地を提供。
Nep提供の2曲もオーソドックスなNepビートになっていて、そこもRocっぽいと言えそうだ。
その一方でNew York度も今作はアップ。冒頭を飾るはBuckwild先生によるタイトな"Pain & Torture"だし、GFKとRaekwonとでかました"Cartel Gathering"は流石に鉄板。
そして、憧れのNasとの一発"What If"。摩天楼をイメージさせるトラック上にて語られるその内容は、まさしく名曲"Why"のパート2。その"Why"がいくぶんポリティカルだったのに対し、今回は幅広いテーマに私感を交えて喋ってます。
パート2で言えば、盟友Styles Pとの共演になる"One More Step"は名曲"We Gonna Make It"の続編でしょうかね(Barack Obamaが今年の5月ぐらいにやってたスピーチで「One More Stepが必要」みたいなことを言ってましたが、明らかにKissのアルバムをヘビロテで聴いてたんだろうな)。ただ、Stylesのリリック中に出てくる「hustlin' Harry Potter」は正直カッコ悪い……
好きじゃないで言えばMary J.とのレペゼンYonkers"Grind Hard"はつまらなかったな。
最後に"Letter To B.I.G."について。昔の"We'll Always Love Big Poppa"から成熟したKissによる情感たっぷりの語りと溢れる想いが、美しいトラックと相俟って感動を誘うんです。名曲。

このアルバムは感動系だね。文章を書いてて気付いたよ。