No.14 『If Tomorrow Comes...』Maino

Mainoのアルバム、凄く楽しみにしてたんです。昨年の"Hi Hater"で彼のことを知って以来、ずっと気になる存在でした。1973年生まれということで今年で36歳だというのに、こうしてスマッシュヒットを得てmixtapeラッパーからメジャーへ昇格できた苦労人が、どんな形で己を誇示するか、凄く興味がありました。
結果は、イマイチでしたね。(7月3日の記事でも少し触れたのでどうぞ)
何回も聴きたくなるような感じの作品ではないし、捨て曲が多い印象。つまらん曲はとことん退屈。時折単調になる癖があるみたいだ。
そのかわり、いい曲はかなり良いんですけどね。
"Hi Hater"が好きなんだよね。楽しいし、テーマの選び方がBrooklynの偉大すぎる先達Biggieっぽいのもいい。(Remixも豪華で良かったです。Hater連中に「Hello. How you're doin'?」と挨拶するKissがマジカッコいい)
ベストは例のJUSTICE Leagueプロダクションの"Here Comes Trouble"でしょうね。個性的なパーカッションと緊張感あるビートが絡んだナイストラックに、アグレッシブなフローとグッドフックが揃いました。いいですね。
トラックが合えば結果が出せる人なんだと思うよ。"Floating"とかなかなかだし、"Soldier"とか"Gangsta"とか聴いてると、南寄りのトラックが合うんでしょうね。
Joe Budden"Pray For Me"と同ネタになってしまったが、テーマとフローの力強さで引き込まれる"Runaway Slave"も見事。
どうにかすれば、もっと良くなる気がするんだよな。しっかりとしたビート選びをして、自らの特性を認識した上でアルバムを作るべきだったと思うが、しゃーないか。
まあMaino的には、Rakimからオファーがあって共演("Walk These Streets")が果たせたこともあったし、人生最良の一年だったろうな。いろいろ苦労してきたみたいだし、とりあえずはたくさん夢が叶っておめでとう、という感じかな。
ただ、次はちゃんとやれよ。こんな手緩い出来なら許さんぞ。
もちろん、次があれば、の話だが。


……で、今あらためて聴いてみると、案外コンセプチュアルなアルバムだということに気付きました。遅っ。
言いたいことがあって、それを形にしようとしたら、こんな感じに棒読みも少なくないアルバムになったわけね。実はリリシストなのか。
10年の服役から解放され、誓いを立て、ストリートで奮闘して、妬みや諸々のshitとぶつかりながら、最後にはディールを獲得し、ミリオンバックスにありつけた、というのがこのアルバムです。
感動的ですが、もうちょい上手い聴かせ方もあった気がする。棒読みにならず、そのままメッセージも込める術が欲しかった。