No.3 『The Darkside Vol.1』Fat Joe

またもコンスタントなリリースとなったFat Joe。もはや誰も注意を払ってませんが、せっかく出してくれたんで聴いてみましたよ。

すると、意外とコレがなかなかに良かったりする。Joeyのキャラに合う渋めな選曲にストイックなフロウを乗せて落ち着かせた一枚に仕上がっている印象で、すんなりと聴けつつ何度も聴き込めるようなアルバムになってるかもしれない。
2000年代に入ってから初めてだろうね、この充実感。『All Or Nothing』も粒揃いだったけど、あれはどこか少し浮わついてた部分があったからね。今作に関しては全体的に地に足が着いていると思った。
もちろんパーフェクトではない。相変わらず聴いたことあるネタを無神経に使ったりするし、なんでValley Of Deathっていう曲名をつけたりするかなぁ。そういうところ、ちゃんとしてほしい。人と被ることを気にしないなんて、芸術家としてどうなんだよ。
まぁ、いいけどさ。

では、良かった曲について触れていきましょう。
先述の"Valley Of Death"。タイトルは昨年Rick Rossが使ったものだし、トラックもProdigy of Mobb Deepが名曲"Bang On Em"にて使用されたものであるというヒドさだが、曲自体はなかなかの良曲だから許してやるしかない。Cool&Dreならではのソウル感覚はThe Game"Hate It Or Love It"あたりを思い出させるね。こういうのは好きだから許す。
"I Am Crack"も細かいこと言えばJuelz Santanaの曲にあるけど、これはいいよ、Joey Crackだからね貴方は。この手のトラックとの相性が良いのは"Joey Don't Do It"で示されてたし、これも悪くない。
"Kilo"はGFKとRaeによる同名曲のリメイク。Joeyは普通だけどClipseとCamがブチかましてるね。Camはエンジンがかかってきたみたいで次なる動きが非常に楽しみです。
近いところではMaino"However Do You Want It"でも使われた定番のSoul II Soul"Back 2 Life"ネタの"(Ha Ha)Slow Down"。なんだよつまらんがな思うけど、Jeezyのアシストも得た巧みなフックワークは抗しがたいものがある。Joeyはこういうフック作りの巧さで前線に残り続けた人だから、らしいと言えばらしいんだろうな。
続くのがハイライト曲"If It Ain't About Money"。Ginuwineとの"Crush Tonight"とかJ.Holidayとの"I Won't Tell"とか、♂ボーカルとのコンビで結果を出してきたJoeyですが、ここでもTreyと素晴らしい曲を産み出している。Isley風の歌唱でイントロを彩ったと思ったらサビでは軽やかに跳ねたりと、完全に主役を喰ったTreyのパフォーマンスは自信に満ち溢れていて、ひたすら素晴らしい。間違いなく若手ではナンバーワンのシンガーだね。Chris BrownOmarion、Bobby V.やMarioあたりが勝手に失速してる中、ただ一人延び続けてるのは凄いことだ。『Ready』は好かんかったけど、『Passion,Pain&Pleasure』は見事なアルバムだったし、客演でも質の高い仕事が続いているよね。ヒップホップのフックシンガーはこれからもTreyとNe-YoとLloydがほとんどを担当していくだろう。頑張れBobby!
注目のRico Loveが参加した"No Problems"も良いね。Loso"Imma Do It"やSnoop"I Wanna Rock"あたりのノリのトラックをJoeyも巧みに乗りこなしている。
Kellsが丁寧に情感込めて歌うのが笑える"How Did We Get Here"もいいし、Bustaが久しぶりにエキセントリックなテンションで弾ける"At The Supremacy"もあったり、最後の最後まで興味を失うことなく聴ける。これは充実作と言って差し支えないかと。


次があるのならば、僕が望むのは、自分で新しいネタを見つけ、良い感じの曲を作ってくれということ。
まぁ、どうでもいいか。
いいアルバムありがとう。こっちが大事だな。一番大事だ。