いや、笑えよ

今回も長くなります。ちなみにCommonの話をします。



Common『Nobody's Smiling』の国内盤が発売されましたので。
なんかHipHopDXだったかなレビューで『Be』以来の傑作みたいなことが書いてあって、ちょっとマジかよとありえんしと思ったんですが。
どうですか。悪くはないが、なんか意外でしたね。
何が意外って、この感じ何だっけなぁと考えたら、これって『Universal Mind Control』じゃん。
当時ほぼ黙殺されたあのアルバム。確かに年末でバタバタした時期だったけどさ、不当なまでに無視されてるよな。
Commonといったら世間的にResurrection・Like Water For Chocolate・Beっていうガチガチな評価なんですが、まぁそれはいいんだよ別に。そんなもん別にみんな他のラッパーもそう。NasといったらIllmaticだし、JayといったらReasonable DoubtとBlueprintでしょ。50といったらGet Rich Or Die Tryin'だし。
問題は、それ以外の展開を見せるとブーイングが出ることである。これはヒップホップという男らしさと女々しさの間で図々しく揺れる音楽性ゆえなんですが。
Commonはほんとにリスナーにシビアな受け取られ方をずっとされてる方で、ちょっとでも羽目を外すと袋叩きですわ。ボコボコ。
Electric Circusっていう微妙な黒歴史。今聴いたら、なんか半端なやり口で、まぁありえなくもないんだけど、ぬるいよなぁと。振り切れたら良かったんかな。わからんけど、当時はなかなかの言われようだった。Dilla信者ですら擁護に困るような、変な子だった。Dillaが関われば何でもマンセーで定評がある信者さんたちにも受け入れ難い、気難しいヤツだった。
思えば、2002年とかヒップホップはまだまだ幼かったんだろうな。ヒップホップの純粋性とかイノセンスの話になると大体話題に挙がるのがBiggieとかI Used To Love H.E.R.ですけど。まぁ確かにそこらへん1994あたりに転機はあって。ここが多分ヒップホップの物心がついた時期とでも言いましょうか。しばらく穏やかに流れていくけど、90年代後半のPuffとRuff Rydersみたいな相反する存在だったり、Jay-Zのような両獲りもあったりと、たくさんの矛盾を抱え込んでいた時代が結構あって。何というか、反抗期というか、不安定な。Eminemの登場も何かシーンを変えるまでには至らず、終始変な自意識に駆られてメチャクチャだったんだと、今にして思います。自意識過剰だよな。常にビクビクしていて、周りの視線ばっかり気にしちゃって。誰も見ていないっつーの。好きなように自分を表現できていたのはOutkastだけ?
結局この自意識から抜けて大人の階段をのぼるきっかけになったのは、『The Love Below』と『The College Dropout』あたりでしょうか。何をやっても大丈夫、自分の好きなように生きていってもいいっていう、そういう境地にたどりつけたのは2003終わりから2004にかけて。
その先『808s & Heartbreak』と『So Far Gone』によってもう一段階ヒップホップは自由を手に入れるわけですが。いや、何の話だっけ。
なんかCommonの話をすると勝手にヒップホップとは?みたいな展開になりがちだよね。面白いねそういうキャラというか、そうさせる何かがあるっていう。
話を戻すと、時代のせいもありつつ『Electric Circus』はいまいちだったよと。それがあって、『Be』『Finding Forver』という第3の春。そこからのあえての『Universal Mind Control』。ECリベンジ的な趣もあるUMC。
あれはどうだったんかな。このブログに書いた僕の昔のレビューでは評価がわりと高くて、2008年ランキング第4位ですか。まじかよ超すげーじゃんですが、世間的にはね、これもいまいち扱いされたんだろうな。
ぼちぼち好評だった前作の『The Dreamer/ The Believer』に続きNo I.D.が全編を手がけた新作。落ち着いたメロウネスで彩られた前作とは打って変わってのアッパーな新作。同じNo I.D.なのに。この音で行くって2人で決めたんだろう。
そして得られた高評価。平たく言えばUMCと同じ系列のサウンドだというのに、受け入れられている。
もう、ほんと雑な話。結局No I.D.だったら何でもいい、CommonにNepは許さんっていう、そういう思考停止な話。
そういうのって世間ではよくあること。だからどうするわけでもなく。
それとも時代が追いついたのか。シーンがUMCサウンドを受け入れられるだけのものに成長したのか。わからん。
じゃあ6年早かったということか。先取りしすぎだな。たしかにPharrell復権まで待つべきだったのかもしれん。
まぁ、厳密に言えば味付けがちょっと違うんだよな。No I.D.は最後に渋味を残す。Pharrellはピリッと辛味を利かせるっていう。そこらへんがリスナーの耳に多少影響を与えているのかも。
あとはリリカルコンテントか。たしかにUMCはベタにプレイヤー感を出してましたよね。NSはいつものコンシャス寄りで。そういうのも大事か。
もうね、僕も歳をとって、昔みたいに歌詞がどうとか追えなくなっているんです。今はもう専らサウンド重視。通勤中に楽しくなれるようなトラックばっかり求めてしまいます。
NSで言えば、例の父親のポエトリーリーディングは入っておらず。どうなんですかね、忘れてたのか、このアルバムは外伝的に扱うのか、ここもよくわからん。
まぁでもラスト曲は最初から決めてたんだろうな。ゆっくり振り返りながら静かに想いを捧げる"Rewind That"は、やや説明口調が過ぎるものの、特別な響きと重みを持っている。
個人的には"Real"が良かった。僕自身わかりやすく歌モノに惹かれるタイミングなんです。Elijah Blakeもいい仕事。
まとまらない。変な文章です。



やっぱり僕の中の一番はResurrectionですね。
もちろんBeも特別ですけど、あれは神懸ってましたけど。最高のアルバムですけど。
でも、よーく考えてほしい。Commonがああいう聖人君子なはずがない。
『Can I Borrow A Dollar?』を思い出してほしい。あの明け透けでゲスいデビューアルバム。ああいうのもあるんだよね。あれが全てとは言わないけど、あれも彼だっていう。
多分デビューできて前よりもモテるようになったんだろうな。ちょっと余裕ができて、より広く視野を持ちながら、アイデンティティを探し求めたのがセカンド『Resurrection』。進化を見せたNo I.D.と共に、夢と情熱込めて作り上げられた、何というか青春を感じさせるアルバムなんだよね。
そうか。あれは青春だったんだな。まだ諦めたり悟ったりする前、身体は大きくなったけど心は大人になる直前、世間知らずで世の中甘くないことを本当の意味では理解できていない中で、それでも必死にもがき人生を大きく花開かせるべく暴れまくった、そんな感じなんだね。
二度と戻れない人生、青春時代への後悔とか別にないけど、あの頃のことを思うと少しビターな思いも出てくるよね。No I.D.の渋味こもったトラックに乗せて、魂込めて青春を叫ぶCommonのラップを聴くと、そういうノスタルジックな感情を覚えるのである。
面白いね。倫理の特別課題としてCommon聴けばいいかもしれん。