No.19 堀込泰行 "New Day"

末っ子の特性ってあるからね。無邪気さであったり、素直な表出というか、わりとイノセントな生き様でいられるというか。
キリンジを見てると、いつもそういうことを考えさせられていた。



泰行が抜けて3年ぐらいが経つ。
かねてから予想されていたとはいえ、のらりくらりと気ままな生活。リリースペースとか毛頭。
正直言うと諦めてたよ。期待してるけど悲しいので、諦めようとして強がって、そうしてるうちに受け入れられるのではないかと。
実際受け入れてたと思う。ある程度。


唐突に新譜『One』が届けられた。
またもや杜撰なタイトル。期待なんてできるわけがない。
でも、どうしてこうなるのか。
埋蔵金というか。いいものが披露されているんだけど、どこでコレ眠ってたの。
枯れない泉とまでは言わないけど、まだ尽きぬだけの実力があったということか。
やっぱりカリスマは違う。やっぱり違う。
天才は何度でも甦る。これは高樹の時にも書いた気がするな。
結局は集中力の問題でしかなく、底力とか地力はあるわけで、タイミングさえハマればこういう作品を産むことは全然できうるわけよね。
よかった。


この"New Day"なんかはほぼほぼスティーリーダンだよね。渋く粋にこなす名曲。
"最後の週末"に溢れる大瀧詠一とか山達あたりのはっぴいえんど感。
"僕らのかたち"の多少なベタなオーラスっぷりも全然いい。


もしキリンジだったら、こういう曲とかありえなかったと思うんよ。
インタビュアーに「スティーリーダン」とか「大瀧詠一」って言われちゃうからね。
高樹がいたら、絶対そう言われないように避けるタイプの楽曲。好きな種類の音楽だろうけど、あえて遠ざかって行くはず。
でも泰行は、わりと普通にのほほんと作っちゃうし、出しちゃう。
良い曲は良いし、好きな曲なわけで。
そこがとっても泰行らしいし、愛すべき末っ子感、弟感がある。
さすが国民的弟。1億3千万人の弟。
44歳だけど。
もう声もしわがれつつあるけど。


いろいろな未来がある。ありえる。そんな気がした。
楽しみやね。フォーエバー堀込兄弟。