どうせ最近『Resurrection』を聴いたクチか

The Gameというラッパーに対し、リスナーはどのようなイメージを抱いているのだろうか。
あいつって、案外lyricalなんだよね。LyricalいうてもTalib Kweliのように道徳性を持ってるわけではないし、Nasのように社会性を持っているわけではない。でも「ヤツらを殺して、女をヤッて、ハッパ吸って」のような金太郎飴ラップでもない。いろいろ有名人の名前を出したりして、ひねった言葉遊びしてます。そのセンスが、ちょっぴり小賢しいんです。ひねってるんで、翻訳家も面白いトコロを見逃しちゃいがちで、対訳にも上手く載らなかったりするんですよ。勿体ないので、今回はそれを拾って行きたい思います。
ふたつ、いいのがあるので紹介します。
まずは、やや古2006年Snoop Dogg "Gangbangn 101",The Gameによる3rd Verseを。「I'm on that bullshit, Throwback Scott' Pippen」というラインがあります。たしか西原潤さんの訳は「オレはブルシットにぶつかってる。クソみたいなスコット・ピッペンの時代に逆戻りだ」みたいになってたと思いますが、どうなんでしょう。
もしThe GameがLAのレイカーズ(もしくはクリッパーズ)を応援してるなら、ピッペンがブルズにいたころのNBAは面白くなかったかもしれない。そりゃ、強かったよトライアングルオフェンス。昔パクソンがサンズ戦でスリー決めたのをアメリカのTVで観てたのを覚えてます。
でもその一方で、The Gameは"Doctor's Advocate"にて次のように言っている。「I was 12, smoking chronic, in '92, I had a choice, be like Mike, or be like you,」Mike=Michael Jordanで、you=Dr. Dreなんですけど、The GameにとってMJはDr. Dreと並ぶくらい憧れの人なんです。そんな大好きなMJの良き相棒だったPippenをそんなにけなしますかね。まあPippenの勝負弱さとか精神面の脆さとかが嫌いかもしれないが、ゴメン、NBAの知識はミーハー程度にしかないわ。
結局あのラインは何だったのか。ポイントはbullshitにあって、bullからBullsを連想したんでしょう。それで前の行のCrippinとの韻を踏まえてのPippenになったのではないでしょうか。しかもThrowbackもthrow backでバスケっぽいしね。
もう一曲、最新の『LAX』に入ってる"House Of Pain"の3rd Verse、「I got it made like my last name」というラインについて。これまたJunさんが担当してて、たしか「オレの名前のようにゲームを支配する」みたいな若干意味不明な訳がなされてたと思います。
多分、正しくはこうです。ここでのポイントはlast name。The Gameの'Game'ではなく、本名Jayceon Terrell Taylorの'Taylor'のことを指しているのでしょう。訳はこんな感じ「オレは自分の名前(=Taylor)のように成功(=made)しなきゃいけない」。ほら、Taylorとmadeって来たら、テイラーメイドでしょ。そんな意味があると思います。
見ていただいた2つのラインは、いずれもスルーされてもおかしくない些細さ具合ですが、実はダブルミーニングだったりするんです。ダブルミーニングと言ったら、そういえばCommonの十八番、いや正しく言えばCommon Senseの十八番でしたよね。正真正銘のシカゴ人であるCommon Senseも「I'm like B.J. my Arm is Strong」("Thisisme")なるBulls系ラインを残してたりしますが、そんな元Common Sense、現CommonとThe Gameが共演しても何の違和感もないでしょ。"Angel"は名曲です。Kanyeもナイストラックサンキュー。