こんなタイミングですが

『Finding Forever』。「さすがに今作のCommonは無難に過ぎた。つまらん」っていう意見が散見される。本当にそうか?
相変わらずの鋭いワードプレイは健在だ。特にそれが顕著に出たのが"Southside"という曲である。
この歌は、「オレはシカゴのサウスサイド出身だ」っていうレペゼン系の曲..と思わせて、そんな単純でも無い。セルフボースティング中心の言葉遊びの中に、ところどころ組み込まれたといったフレーズ..これは同じSouthsideでも'アメリカ'のSouthsideのhiphopに登場するキーワードなのである。つまり、southsideを連想させるフレーズを挟み込むことで、この曲のsouthside感をアップさせていて、そこんトコ巧みでしょ。
でも最後にはconflict is crucialとかのシカゴ寄りのラインも残していて、地元愛も忘れません。偉い。
いや〜、僕は『Finding Forever』、好きだけどね。(1)今までのCommonの歴史が凝縮されてる内容だし、(2)何と言っても人懐っこい。
(1)について。例えば"The People"のエレピはデビュー曲"Take It EZ"を仄かに思い出させるし、"I Want You"は"The Light"の続編になりそうなラブソングだし、"U,Black Maybe"はスティービー・ワンダーネタの美しいメッセージソングということで"Retrospect For Life"と全く同質だし、"The Game"のバトルライムとスクラッチ(by Primo)は"The 6th Sense"以来だし、さっきの"Southside"のラフで土臭いビートは"I Got A Right Ta"っぽい。"So Far To Go"〜"Break My Heart"のDillaトリビュートの流れもCommonの歴史には欠かせないですし。
(2)について。堅苦しいDilla信者は、未だにCommonのベストは『Like Water For Chocolate』だと主張し続け、ヘタしたら『Electric Circus』もカンペキだと'ほざき'、カニエなんて糞だと息巻くんです。しかもSoulquariansだけを高尚とし他の全ては低俗だと切り捨てる。ちょっと待てよ。
ちなみに、僕はCommonのベストは『Resurrection』だろうなと思ってますが、それは置いといて。
確かにDillaの構築する美は凄いと思う。細部まで目が行き届いてるから凄い。でも、どこか機械っぽく無機質で人間味が感じられない。
Commonの魅力って、なんか垢抜けない人懐っこいキャラクターだと思ってるからさ、Dillaとは合わないと思うんです。
彼の前作『Be』は本当にソウルフルで美しい、真の傑作だと思ってるんだけど、そう思わせるのは、彼の語り口がstreetに戻ったのと同時に、トラックに温もりがあるから、と思いますが。
『Finding Forever』も温かいよね。むしろ、神々しさすらあった『Be』よりも身近に感じられるアルバムかもね。
やっぱり無理だ。『Like Water For Chocolate』と『Electric Circus』は好きになれん。人に薦めにくいでしょ。そういう内輪だけで楽しむタイプの音楽って好きじゃないんだ。ゴメンね、日本に沢山存在するDillaファンの皆さん。でも、僕には、あなた方が「アンダーグラウンドぶる人」(by フルーツポンチ)にしか見えないんです。
Commonには最後まで親しみやすい兄ちゃんでいてほしいです。最後にKanyeの言葉を。
「Commonは現代のMarvin Gayeだね。彼は、僕たちが人生の中で経験することをラップするんだ。」