No.11 『The Renaissance』Q-Tip

HipHop界の伝説として語り続けられているA Tribe Called Quest。リアルタイムで味わっていない僕が語るのもアレだが、冬の澄んだ凍てつく空気の中で吐き出された白い吐息さえも忘れさせてくれそうな温もりいっぱいの"Electric Relaxation"とか聴くと、唯一無二だよな、と思うよ。
Q-TipATCQ解散後、自らの道を模索してて、『Amplified』の後、いくつか未発表音源とか半公式盤とか出したものの、結局9年を要したわけだが、その結果Qちゃんが得た答えというのは、「まあ別に肩肘張らんくてもいいっしょ?」という実に単純なものだった。
身の丈に合わない挑戦、トレンドへの目配せは皆無(アルバムタイトルぐらいか?)で、真っ直ぐ混じり気のない一枚になりました。気を衒ったりしないで、昔の姿のまま帰ってきたQちゃん。まるで同窓会のような一枚です。
あのムードを演出するジャズトラックの柔らかさに、唯一無二のあの声の美しさ...
何も変わらず、最高の芸術なんです。
もちろん、厳しく言えば、この一枚でシーンに清新な気運を持ち込めるはずがなく、「ルネッサンス」というアルバムタイトルに名前負けしてると言えなくもない。
ただ、それがどうしたって言い切れるほど、この安心感はホッとするよ。
もうちょいQちゃんにネクストレベルを期待してた人もいただろうね。でも、あとちょっとなのに敢えて突き抜けない、この塩梅が抜群に絶妙なのかな。