No.24 『The State Vs. Radric Davis』Gucci Mane

さて、2009年のダークホースとして期待されていたGucci Maneのアルバムである。
2005年のインディー盤『Trap House』から始まったキャリアですよね。最初期のtrap曲かもしれない"Icey"という曲が小ヒット、しかし共演したYoung Jeezyとのビーフ、メジャーの王道を突き進むそのライバルとは対照的にインディー時代が続きますが、2007年の『Hard To Kill』に収められた"Freaky Gurl"がこれまた小ヒット。これがきっかけとなってAtlanticとのディールを獲得、『Back To The Trap House』でめでたくメジャー進出となったわけです。その後、『Trap-A-Thon』や『Murder Was The Case』といったインディー物、そして数多のミックステープを経て、爆発的なbuzzをゲット、満を持してのメジャー2作目というわけです。最近捕まっちゃいましたが。
アンダーグラウンドレベルでは早い段階で支持を獲得していたGucciですけど、わかりやすくそれが表舞台にも侵攻していったのは昨年あたりからだろうか。Nelly"Ucud Gedit"に登場するのを知った時には、いよいよあのアンダーグラウンドtrapスターがシーンに襲いかかってくるんだなという予感がしてゾクゾクした記憶がありますね。
迎えた2009は凄いことになりました。Mariah Carey"Obsessed (Remix)"や50 Cent"Crime Wave (Remix)"といったドのつくメジャーアーティストへの客演、さらにはTrey SongzとかMario、Waleあたりの曲にも招かれたりと、わかりやすく彼が熱い存在であることを示しています。

さて今作はどうか。
ダラダラと一曲ずつ行きます。
"Classical (Intro)"はオペラ調。「ぶっちゃけBlueprint 3は買わなかったね」と言う所がいい。
"Heavy"は全然ヘビーじゃねぇ。Jeezy"Bottom Of The Map"風ですか。フックはキャッチーだがややインパクト欠けるかな。
"Stupid Wild"のダラッと行くのはアリ。重心低く行くのはGucciっぽい。Weezyは普通。何と言ってもCam、いいじゃないか。やればできるんだから、ちゃんとやれ。
"All About The Money"はわりと展開のあるディズニーtrap?二人のラップがなぁ……Bawseが普通なのが痛い。
"Lemonade"は歌詞の卑猥さと対照的なキッズフックが馬鹿げててよろしい。けどイマイチ。
"Bingo"もつまらんな。バウンシーに跳ねるトラックはいまさらすぎるし。Soulja Boyはいいじゃん。
"Spotlight"にはもうちょいポピュラリティが欲しい。Usherはまあまあ。ラップがへなちょこ。
"I Think I'm In Love"は古いtrapだしつまらん。Gucciにはお馴染みのトラックメーカーZaytoven製ですが、捨て曲かいな。
"Bad Bad Bad"も狙いがわからん。Keyshは可憐だけどイマイチ。トラックには可能性があったが、ダメだ。
"Sex In Crazy Places"も全くでした。ちょっと最近盛り上がってるNicki Minajは普通だし、Gucciも地味。ただ相変わらずBobby Valentinoの声はいい。フックも悪くない。Trinaも良かったよ。
"The Movie"が一番まともだったかな。印象的なピアノのtrapか、いいじゃん、Jazze Pha。ラップもそこそこいいし。
"Volume"はJUSTICE Leagueにしては普通にtrapだが、重厚で深い作りではある。これも悪くない。客演のWhoo Da Kidの声がいい。
"Gingerbread Man"は軽くつまらない。OJもGucciも大したことない。Mannieらしくない捻りのなさにびっくり。
"Wasted"、どことなく漂う哀愁がいいけど、もうちょい。Pliesもシャキッとせんかい。
"Kush Is My Cologne"にDevinを呼ぶのはナイス。そしてDevinいいよね。
"Worst Enemy"はJeezyをディスってますが、寒いな。だって和解したんでしょ。

という具合に、あまり光るところのない、凡庸なアルバムでした。
元々リリックとか迫力で魅せるタイプではなく、キャラや造語で勝負する人だということはわかってたけど、もうちょい改善できたと思う。キャッチーじゃないのが信じられないし、豪華なゲストも活きてない。
Zaytovenがたった1曲、その代わりDrumma Boyが4曲ですね。Jeezyとトレードしたのか?
意外にDrumma Boyが良い音楽にしようと奮起してて驚いたが、無理でしたね。所詮、彼は単なるヘボtrapマンなんです。Shawty ReddやDJ Toomp、Don Cannonとは訳が違う。
それに、やっぱり2009にtrapは古いな、いい加減に。2、3年前ならまだしも、2009はさすがにtrapをやる感じではない。
となると、来年に予定されてるJeezyの新作『Thug Motivation 103』の色付けがどうなってくるか、非常に楽しみなところでありますね。Trapを継続するのか、それとも何か別の道を模索するのか、その決断は非常に興味深いです。