『Hell:The Sequel』を聴いて

カッコイイよね。無駄な遊びなどなく、迷わずストレートに最短距離を選んでいて、実にスマートでクールな作品が産まれている。

Eminemがやっていることは『Relapse』期と変わってない。執拗なまでにライミングにこだわったワードプレイ。
違いとしては、『Relapse』の時はブランクとか世間体とかの理由があって照れ隠しのアクセント乱しがあったのに対し、今作では素直にアウトプットできているという点。
やはり、『Recovery』は殻を破るターニングポイントになったわけだ。過去にも"The Way I Am"や"Like Toy Soldiers"といった例外が稀にあったとはいえ、基本クサめの曲を演じるのを拒んできたEmが、"Not Afraid"みたいな直球の応援歌であったり、"Space Bound"みたいな大人の生々しいラブソングを積極的に披露したこのアルバムは、何かと芸の幅が制限されてきたEmの可能性を押し広げるという、地味ながらもキャリア的に非常に重要な、そんな一枚になったのだ。
「白人ラッパーだから云々」とか「スリムシェイディだから云々」とか「リアルじゃなきゃ云々」とか「道徳的に云々」みたいな下らなすぎるしがらみから解放され、どのように振る舞っても許されるようになったんだ。ホントよかったよ。
変な飾りなどなく、ただ単にヒップホップスターと呼んで差し支えないアーティストへと転身できた。これは間違いなくMarshallの長年の夢だったから、ホント良かった。
"The Reunion"とかもうひたすら素晴らしいよね。緩急とか抜き差しとか声色とか細かい技術が散りばめられていて、こんな光輝く才能がありながら10年近く無意味に眠らされてたんだから、勿体無い。なんて無駄な歳月…

Royceが凄腕なのは今更言うまでもないでしょ。知らんかったヤツはとりあえずダッシュで『Rock City 2.0』と『Street Hop』買ってこい。聴いて痺れたあとは『Bar Exam』シリーズをチェックして唸りなさい。
Cam'ronのような滑らかに流れるタイプのフロウが基本にありながら、もっと筋が通ったリリシズム、自在なチェンジオブペースを持ち合わせた、もう真の実力派ですよ。
今作では若干倍速乗せが多すぎた気もするけど、疑いようのないポテンシャルは伝わったはず。近々出るソロ作『Success Is Certain』が名が体を表すようになってほしい。

結論。
二人末永く仲良くやってほしいね。

そういやそういや、ヒマな人は是非2人が仲良くインタビューにグダグダ答えてる動画(前半/後半)も見てほしいです。Emが如何に普通の人なのかがわかって、嬉しくなれますから。

いやぁ、ケンカとかディスリスペクトとかビーフとかホント下らないな。
みんな仲良くしてよ。お願いだから。