Marshall Mathersという生き方

Eminemのアルバムを今更ですが聴きました。ちょっと最近いろいろと忙しかったのもありまして。
国内盤は20日に発売だったんで、またいつものタイムラグがありつつ、タワレコに行って一直線に買いまして。
さらっと聴きました。


どうですかね、もちろん本当の意味で続編とかいうわけじゃないんでしょうが、ただ、あの凄まじすぎるThe Marshall Mathers LPの名を冠するからにはそれ相応のクオリティを擁さなければ許されないわけで。
思ったよりも生ぬるい印象。ふざけるわけでもなく、かといってガチに韻を踏み倒すわけでもなく。
盛り上がる瞬間が少ない。圧倒されることもない。
見せ場はどこですかね。やっぱりKendrickの存在感が曲にいい意味の緊張をもたらしつつ上手くまとめた"Love Game"か、あるいは独特のソウルを湛えた"Rhyme Or Reason"か。セルフオマージュを盛り込んだ"So Far..."あたりもハイライトかもね。
まあ、"Kill You"での圧倒されまくりブッ飛ばしとか、"Stan"での重くのしかかるどんよりした結末とか、"The Real Slim Shady"でのギラギラした反抗とか、"Kim"での演技を超えた壮絶なドラマとか、あそこまでの領域には及んでないのはもうある程度しょうがないんだろうな。

あんまり言いたかないけど、Eminenというアーティストの寿命というか、アーティスティックな面での到達点が既に前作あたりぐらいに来てしまってたのかもしれない。
同じベテランでもJay-Zなら大御所の立ち位置から意見を述べるようにラップすればいい。Nasなら黒人の意識を高めるラップを続ければいい。50ならギャングスタトークをかませばいい。
でもEmにはそういうのがない。芸能ネタでふざけるには歳をとり過ぎたし、クスリネタで遊ぶのもいい加減ドン引きされる。
今作もたびたび歌を巧みに盛り込んだ曲がありましたが、そのソウル感はどことなくGhostface Killah的な感触がありましたね。やや力技のような無理矢理さもありつつ、選曲の良さとラップの畳み掛けで強引にモノにしちゃう感じ、なんかGFKっぽいかなと。そういうのはいいんじゃないでしょうか。似合うし、上手い。けど、まぁEminemらしさとかは感じない。
"Like Toy Soldiers"とか"My Apologies"とか"Mockingbird"あたりの内省モードはどうか。んー、もう正直そんなに反省することもないんよね。最近は普通に常識人っぽいし。
じゃあ前作にてエポックメイキング的に披露された鼓舞する路線はどうか。"Cinderella Man"や"Not Afraid"、"You're Never Over"あたりは本当にポジティブで真っ直ぐで、新しい可能性を感じさせていたんですが...まぁ、キャラじゃないんだろうな。この前みたいに死にかけの状況でガムシャラにマジになれたタイミングでしか有り得ない代物だったと今なら言えるかも。
こうなると、残されたのはバトルラップぐらいじゃないのか。フリースタイルに近い内容でラップするっていう。
ってなると、Slaughterhouseみたいな作風がひとつの形かなと。もうそれくらいしか展開のしようがないのではないか。

ちょっと言い過ぎかもしれないけど、わりと新作のクオリティが思ったよりも凡庸でショッキングな感想を持ちました。
まぁ、もう何回か聴いてみます。
まずはこんなところで。