Kanye West 『JESUS IS KING』

神に捧げる賛美としてのゴスペルというよりも、人々の魂へ強く訴えかけるためのゴスペルっていうことなんだろうって考えた。
決して歴史を軽んじてるのではなく、その重みと圧がインスピレーションとしてリスナーを震わせることができたらっていう、そういうクリエイティブな狙いがあるんだろうと思った。
たくさんの人に自分の音楽を聴いてほしいっていう、Kanyeのそういう根源的なモチベーションもそこにはある気がした。


今までで一番、一生懸命なアルバムになっている。
彼ほどの天才を持ってしても、産みの苦しみに近いものがあったんだろうなって。
あるいは題材のシビアさ、ジャンルのシビアさに対して慎重にならざるを得なかったのか。
閃きよりも、論理性を重視したようなプロダクション。
そこには積み重ねがある。開けてない引き出しはないし、開けただけじゃなくて全部抜き出している。
曲それぞれのキャラが濃すぎて、相変わらず取り留めのない並びになりかけてはいるんだけど。
ゴスペルの精神、そしてゴスペルの響きが、アルバム全体の背骨としてそれぞれの曲に貫かれている。
だから自然と納得がいった。気持ちが乱れることはない。


2019年、この世で最も濃密な27分4秒の音楽体験を保証します。
まぁあのKenny Gのサックスソロだけは安っぽすぎて笑っちゃいますが。
あの数十秒だけは我慢してね。